変態洗脳!スメール男子イケメン台無し痴態晒しトーナメント! - 2/7

 

無様トーナメント、開幕!

 

 会場には既に大勢の市民が詰めかけていた。中央後方にステージ全体が見渡せる櫓が設えられ、貴賓席になっている。男がレイラを連れて大きな椅子にゆったりと腰掛けると、祝砲が鳴り響き、軽快な音楽が流れ始めた。選手たちの入場だ。

 

 先頭きって現れたのは、大マハマトラ、セノ。法の下に正義を執行し悪人を裁く若き勇者で、身体能力も際立って高い。素論派の代表になった智者でもある。これがまっとうな大会なら間違いなく優勝候補の一人だ。褐色の肌に銀髪が生える美男子であり、冥界の獣神を思わせる狼のような耳を象った被り物に長槍と、野性的で勇壮な出で立ちをしている。

 その衣装はやたらと露出度が高いが、元からそういう格好をしていたため遠目にはあまり違和感はない。が、よく見ると脚の装飾以外は下半身裸だった。

 

 男は思わず吹き出した。その違和感のなさが逆に笑えるのだ。腰元に布の前掛けがあるため、股間のイチモツがうまい具合に隠れている。威勢よく行進する度にそれがめくれてモノが見え隠れするのがまた滑稽だった。定位置に着くと仁王立ちして腕を組み、胸張って目を瞑る。涼しい顔をしているが、風に吹かれて布が動くと金玉が揺れている。

 

 レイラもそれを見てクスクスと笑っていたが、「あれっ」と声を漏らすと男に尋ねた。

 

「あの首輪のようなものは何ですか?変わった意匠、だけど」

 

「あれか。いいところに気が付いた。もちろん俺のペットに過ぎないことを示すためのものでもあるが、それだけじゃあない。この大舞台で痴態を演じさせるにあたり、あいつらの思考は特に強く制御する必要があるからな。あれを使って洗脳の具合を適宜調節しているのだ。そしてもう一つ、重要な仕掛けがあるのだが……いや、後にしよう。次の獲物の登場だ」

 

 ステージに目を戻すと、フェネックのような大きな耳と尻尾が特徴的な、知的で涼しげな獣人の青年が穏やかに手を振って歩いていた。生論派きっての秀才で、アビディアの森を守る大レンジャー長、ティナリだ。親友のセノとは対照的にきっちりと普段どおりの衣装を身に着けている。一見何の異常もないが、むき出しのペニスをぶら下げて行進する友人を引き止めようとしなかった時点で、彼の認識も歪んでいることは明らかだ。

 だが、さすがに頭が切れて鼻が利く優等生なだけはある。セノの隣に並ぶと顎に手を当てて首を捻る。

 

「おかしいな。なんだか、今年の学院祭は既に終ったような気がするんだけど。それに、なんだろう、この言いようのない違和感」

 

 独り言のように小さく呟いたこの言葉は、首輪に内臓された収音機に拾われて男に筒抜けだった。男は満足気にその様子を記録すると、デバイスを操作してティナリの首に指令を送る。ティナリは「うっ」と短い呻き声を上げ、それから徐ろにズボンをずり下げて観客席に尻を向けた。

 

「ほら、見てくれよ♡ この日のために、大好きなキノコを使ってアナルを使う予習もしてきたんだ。僕たちの無様な姿、どうか楽しんでいって欲しいな♡」

 

 尻尾と生尻をフリフリ振りつつ、両手で尻たぶを掴んでケツの穴をくぱぁっ♡ と広げる。知的で穏やかなレンジャー長から発情したメスに早変わりしたティナリのおかげで、会場は笑いの渦に包まれた。

 

「見たか。洗脳の深度には個人差があるが、神の力を使って作ったあの首輪を使えば、ある程度調整することができる。そもそもこの大会を開いたのは、洗脳のかかりやすさの個体差や、神の力を使って作った首輪の効力を調べる実験のためでもある。それに、洗脳に耐性がある奴を弄ぶのは楽しいしな」

 

 男が言い聞かせると、レイラは感心したように大きく頷いた。彼女もまた被検体だということに、レイラ自身は気づいていない。

 

 と、その時。何かが勢いよく宙を滑って会場へ飛び込んできた。

 

「くくく。愚かな奴らめ。教令院を代表する天才ともあろう者が、揃いも揃ってあっさりと洗脳されたあげく、公衆の面前で汚い尻を晒しているなんてね。まったく、呆れて物も言えないよ」

 

 などと饒舌に語るひねくれ歪んだ少年。全くの無名だったが先の大会で急に現れて因論派の代表に選ばれた、「笠っち」と呼ばれる正体不明の美少年だ。風元素を操って自在に宙を舞い観客を圧倒した彼は、ステージ中央で浮遊しながら静止すると、トレードマークの笠に手を当てて、吊り上がった大きな目を男の方に向けた。

 

「聞こえてるんだろう?お前がこの珍事の首謀者だってことはわかっているよ。言っておくが、僕はこいつらとは違う。なにせ空っぽの人形だからね。僕の心を弄ぼうなんて思わないことだ」

 

 男は捕獲した草神の知識をデータベースにして参照していたので、この少年の正体を知っている。どうやら彼の言う通り、異国の神によって作り出された人形のような存在らしい。一時は悪事を働いていたものの、今は一介の放浪者としてスメールに滞在している。

 だが、人ならざる者とはいえ、幸か不幸か、最近の彼は人間の心に触れすぎた。また、草神とも深い繋がりができている。それだけに、彼の意識に干渉するのは思いのほか簡単だった。当の本人は洗脳されていることにすら気づかず、勝ち誇ったように不敵な笑みを浮かべているのが滑稽で、男の笑いを誘う。

 

 なにせ偉そうに挑発してくるこの少年、宙に浮かびながら失禁しているのだ。

 短いズボンの裾から黄色い液体が足を伝って流れ落ち、地面へ降り注いでいる。もちろん人形には性器も排泄機能もついていなかったが、機械の専門家であるファルザンの手を借りて事前に改造し、付け加えておいた。男の手元のデバイスで、いつでもどこでも放尿させることができる。人工的な機能による産物とはいえ、尿は生暖かく、しっかりとアンモニア臭も放っている。

 

「なんだい?驚いて声も出ないか。ははははは!僕を招待したのが間違いだったね。今にお前の目論見は崩れ、僕に跪いて命乞いすることになるだろう。それまでの間、この茶番にもつきあってあげるよ。くくく……あはははははは!!!」

 

 高笑いしながらジョロジョロと尿を撒き散らす少年は、自分が大観衆の前で盛大にお漏らししている事実さえ認識できていない。

 近くにいたセノは呆れたようにジトリと見上げ、ティナリに至っては鼻を摘んで汚物を見るような目で睨みつけている。そんな二人も尻を丸出しにしたままだ。

 

 ますます会場が笑いに包まれる中、二人の男がほぼ同時に入場してきた。書記官のアルハイゼン。それから、妙論派を代表する建築デザイナーのカーヴェだ。アルハイゼンはいつも通りの無表情だが、カーヴェの方は緊張と羞恥が顔に表れている。

 この二人も多少は洗脳に耐性があるらしく、おそらくスメールが危機に瀕していることを悟っている。

 代理賢者に抜擢される程有能な男として知られるアルハイゼンはもちろん、どこか落ち着きのないカーヴェもこう見えて油断できない。なにせカーヴェは先日開催された本物の学院トーナメントの優勝者なのだ。お人好しな上に芸術家としてのこだわりが強く、損ばかりしている苦労人。それだけに情も厚く、粘り強く努力して着実に結果を出す男だ。放っておけば男を脅かす存在となり得ただろう。

 二人とも起死回生のチャンスを狙って大会に参加したのだろうが、男は彼らの反抗心を面白がっていた。

 

「あの人達、何か企んでいるようだけど。首輪で調整しなくていいんですか?」

 

傍らのレイラが疑問を呈するが、男はニタニタと笑ったままだ。

 

「自分たちは正常だと思い込んでいるところが面白いのだ。あいつらにも仕込みは済ませてある。今に面白いものが見られるぞ」

 

 既に男の邪悪な罠に嵌っているとも知らず、カーヴェとアルハイゼンは虎視眈々と叛逆の機を窺っていた。

 

「やあやあ、どうもどうも!」

 

 最後に登場したのは、砂漠に拠点を置く組織「沈黙の殿」の若き首領、セトス。褐色の顔に満面の笑みを湛え、観衆に向かって明るく手を振っている。

 人当たりがよく、それでいて抜け目がない。底の知れないこの少年を、偽賢者は特に興味深く思っていた。だからこそ事前に接触し、対面で話をしておいた。その成果はこの大会の中で現れるだろう。

 

 セトスは悠々と行進を終えると、他の参加者たちにも笑顔で挨拶して位置についた。

 役者は揃った。ファンファーレが流れ、司会によって開幕が宣言される。

 

 ついに、スメールを代表する若き才能達による未曽有の痴態ショーの幕が上がる。

 仕込みは万全だ。あれこれ考える必要もない。

 ここからは一観客として、ただ純粋にこの低俗な余興を楽しませてもらおう。

 男は深々とソファに身を預け、高級ワインをグラスの中で転がした。そうしてこれから目の前で繰り広げる、麗しき男達の常軌を逸した醜態を肴に、酒を楽しむのだ。