「鍾離様、ご無事ですか!」
しばらくして、尋常でない邪気を察した魈が鍾離の元に馳せ参じた。
少年の姿をしているが、魈は璃月を守護する護法夜叉の生き残りで、長い時を生きている仙人である。寡黙で一人でいることが多いが、恩人であり璃月の神であった鍾離への忠節は誰よりも厚い。
魈が駆け付けた時、鍾離は腕を組んで岩壁に立っていた。
無事を確認して安堵したのも束の間、鐘離の足元で蠢くモノを見て思わず息を呑む。
「鍾離様……ソレは、一体」
「ああ、魈か」
鍾離は魈を一瞥すると、足元でうずくまる人影に視線を戻して淡々と答える。
「身の程を知らない愚か者の末路、といったところか」
奇声を発してぴくぴくと蠢くソレに、魈も見覚えがあった。先ごろ魔神オセルを復活させて璃月を混乱の渦に飲ませたファデュイの執行官……タルタリヤ。
「ほひっ♡ ほひっ♡ はひょ゛っ♡ ほへぇ゛~~ッ!♡♡♡」
張り詰めた空気を台無しにする滑稽な奇声。それはタルタリヤが上げる喘ぎ声だった。
尻を高く掲げ、片頬を地面に押し付けた格好で倒れ伏し、あろうことか両手で自身の肉棒を掴んで、ごしごしと激しく擦って自慰行為に耽っている。
そう、両手で。
タルタリヤの男性器は、両手で握ってもなお余りあるほど大きい。そして歪んだ彼の横顔は白眼を剥いて舌を突き出した壮絶なもので、流れ出た涎や鼻水が地面を汚している。
その醜悪さと異常さに、魈は顔をしかめる。大の大人が野外で性器を露出して自慰をしている時点でおかしいが、その肉棒や表情を見れば、それがただの露出趣味の変態行為ではなく、何か邪悪な力によるものだということは瞭然だ。
「鍾離様、何があったというのです。この者は、一体」
魈が問いかけると、鍾離は肩をすくめて微笑した。
「やれやれ、「公子」はとんでもない魔神を解き放ってしまったものだ」
「魔神、と仰せですか」
「お前でも聞いたことがないだろうな。この地にはとある淫魔を封じてあった。俺が封じてきた魔神の中でも最も強大で、そして醜悪な力を持つ悪しき魔神だ。その瘴気に触れた者は忽ち膨れ上がった性欲に飲まれ、正気を失ってしまう。この者は愚かにもその封印を解き、蘇った淫魔の瘴気を間近で浴びてしまったのだ。人の身で耐えられるものではない」
「この地にそのような魔神が……。しかし、所詮はただの淫魔。帝君の敵では……」
「まぁ、見ていろ。かの者の力がどれ程か、解き放った公子が身を以て示してくれるだろう」
他人の自慰行為など見たくはないが、鍾離の命ならば逆らえない。魈は小さくため息をつき、地面に這いつくばって尻をヘコヘコ振りたくるタルタリヤに冷ややかな眼差しを向けた。
「はへっ♡ ほひっ♡ あ゛ァ~ッ♡ チンポ気持ちいいよぉ♡ お゛♡ ぉひょおお゛ッ!♡♡♡」
聞くに堪えない耳障りな嬌声。見るに堪えない歪み切った表情。たしかに正常でないことはわかる。だが、こんな汚いモノを見てどうなる。こんなことをさせているだけの敵を畏怖せよというのか。しばらくの間、魈は無言でタルタリヤの痴態を見下ろし続けた。
(なんと下賤な。人間には恥というものがないのか。このような低俗な術に我や帝君がかかるわけがなかろう。帝君は何がしたいのだ)
魈が痺れを切らした頃だった。
「あ゛ッ♡い、イキそう……♡……はっ!!ひっ!い、嫌だっ!嫌だ、イキたくないっ!!」
タルタリヤの喘ぎ声が、一転して恐怖に満ちた悲鳴のような声音に変わった。
「も、もう嫌だぁっ!!た、助けてくれっ、先生!お、俺が悪かったよ!謝る!謝るから!だから!もう、射精させないでくれええ゛ぇっ!!」
意味のわからない懇願。タルタリヤは怯え切った目で鍾離を見上げ、鼻水を垂らして子供のように泣きじゃくる。それなのに、その両手は巨根を激しく扱き続けている。
魈は眉を顰め、タルタリヤの方へ少し歩み寄った。そしてようやく気付いた。タルタリヤの周囲が水浸しになっていることに。いや、水ではない。鼻から息を吸うと、濃厚な臭いが鼻孔を刺激する。おびただしい量の精液が、辺り一帯に撒き散らされているのだ。
「「公子」は既に100回は射精している。射精する度に快楽に飲まれ、気が狂ったように肉棒を擦っていたのだが、さすがに生命の危機を感じて少し正気が戻ってきたようだな。それも一時的なものだろうが」
鍾離が死にかけの虫でも見下ろすように淡々と語る。その間も、精液の海に転がったタルタリヤは命乞いをしながら股間を弄り続けていた。
「ひっ♡ あひィッ゛♡ たっ、頼むよ!これ以上出したら、本当に死んでしまう!何でもするからっ!家族に、弟や妹に会えなくなるのは嫌だっ!」
「ならば死ぬまでそうして自慰に溺れているんだな。淫魔を侮った報いだ」
鍾離がタルタリヤの尻を蹴ると、ドッピュウウウ!とそのペニスから押し出されるかのように大量の精液が吹き出した。
「ひいいッ!イグッ!またイギュウゥッ!お゛ッッッほおお゛ォ゛ッ♡♡ おへっ♡ お゛ッへえええぇ~~ッ!♡♡♡」
つい今し方までの悲壮感を吹き飛ばすような、蕩け切った間抜けな絶叫を上げるタルタリヤ。目はぐるりと上を向き、口元はにんまりと下品な弧を描いている。ビチャビチャと地を叩く精液はさながら小便のようだ。
「ぇ゛へっ♡ どまりゃないぃっ♡ せーしが止まらにゃい゛ッ♡ ぢぬっ♡ ぎもぢよしゅぎへぇっ♡ 死んじゃうに゛ょに♡ あへぇ゛っ♡ シコシコ止めりゃんにゃいよぉ゛っ♡ あひいいいィッ♡♡♡」
舌を限界まで伸ばし、顔の筋肉が裂けそうなほど目や口をひしゃげさせ、それでも巨根を扱き上げる手は止まらない。このままでは本当に死んでしまうのではないか。
狂気に圧されて魈が一歩引いた、その時だった。
「あ゛っへええ゛ぇ~~~!!♡♡ ……んひょっ!?」
断末魔が間抜けな奇声で途切れたかと思うと、タルタリヤは歪み切っただらしのない顔で肥大化したペニスを握ったまま、物言わぬ石の塊と化していた。
すぐに思い当って、魈は鍾離の方を振り向いた。案の定、彼の力によるものだったらしい。鍾離は侮蔑と哀れみの籠った目を人の形をした石へと向けた。
「あのままでは快楽で脳が焼き切れて死んでいた。自ら撒いたタネとはいえ、このような最期は武人としてあまりに惨めだからな。せめてもの情けだ。こうしておけば、命だけは保てるだろう」
魈は憐れみと侮蔑の籠った目で、つい先ほどまで「公子」であったモノを見下ろした。地に伏せって高く尻を突き出した格好で石となっているため、その豊満な双丘はさながら悪趣味な腰掛けのようにも見える。
(このような情けない姿を晒し続けるくらいならば、死んだ方が遥かにマシではないか)
魈は眉を顰めて愚者の像を見やる。当のタルタリヤの表情は、悲壮感の欠片もない間抜け面で固定されている。石の棒と化したペニスからは依然として濃い精液がダラダラと垂れ落ちており、石化してなお無限射精地獄から抜け出せていないことが見て取れる。こんな姿になっても終らない絶頂に苛まれているのだろう。垂れ落ちる精液は、さながら流せない涙の代わりのように見えた。
けたたましく響いていたタルタリヤの喘ぎや叫びが途切れたことで、周囲は不気味なほど静まり返っている。冷たい風が吹き、魈の両腕を冷気が撫でた。