緑色のコブタ

「くそっ、香穂のやつ………!」

土浦梁太郎は悪態をつきながら、誰もいない屋上のベンチにどっかりと腰を落とした。

「あいつなら………わかってくれると思ったのに」

寒空の下、頭を抱えながら、彼は最愛の人の姿を思い浮かべていた。寂しそうな、日野香穂子の顔を。

スポーツマンでありながら繊細なピアニストでもある土浦は、最近、香穂子に内緒でバイオリンの練習に励んでいた。別にやましいことをしているわけではない。ただ、彼女が美しく奏でる楽器を四苦八苦しながら練習していることを、知られたくなかった。
彼は、いつでも彼女を守ってやりたいと思っている。彼女にとって、頼りがいのある男でありたいと願っている。だからこそ、もがいている姿を彼女に見せることは、彼の高いプライドが許さなかった。
そう、全ては、彼女のために。

だがそのせいで彼女との時間がとれなくなり、行き違いが生じてしまった。
香穂子も自分と同じく、無駄にベタベタとくっついてアピールすることが恋人であることの証だなどとは思っていないだろう。彼女なら、自分が指揮者になるという夢に向かってひた走ることを、黙って応援してくれるはず。そう思っていた。
それなのに………。

風が強く吹き付けた。1月なので寒いのは当然だが、今日は一段と空気が冷たい。昼休みだというのに他に生徒がいないのは、そのためだ。

「くそっ。なんで……」

この冷気で頭を冷まそうとしていたのに、土浦の頭は熱くなるばかりだった。
もし、このまま元に戻れなかったら……。
そう思うと怖かった。だが、自分は悪くない、と頑なにそう信じていた。先ほどの彼女の言葉が、表情が、許せなかった。
予鈴の音が響きわたった。だが、土浦は腰を上げる気にはならなかった。授業など、どうでもよかった。
雲ひとつない澄みきった大空が、彼だけを包んでいた。

どれくらいの時間が過ぎただろうか。突然、入り口の扉が開く音がした。
土浦がいぶかしんで顔を上げると、そこには見知った顔があった。

「やぁ、土浦くん。授業はどうしたんだい?」

いつものように完璧すぎるほどの笑顔をくっつけて、色白の美少年、柚木梓馬が尋ねた。
土浦は面倒臭そうに微笑を作って、

「先輩こそ、学園一の優等生がサボりですか?」

皮肉めいた冗談のつもりだったが、苛立っていたために、それは悪意のこもった嫌味となっていた。だが柚木は涼しい顔のままで平然と答える。

「僕のクラス、今は自習なんだよ。ホラ、あそこ。で、窓からキミが見えたから、どうしたのかな、ってね」
「別に。どうもしませんよ。一人になりたい気分ってだけで」
「おや、じゃあ僕はお邪魔だったかな?」
「そうは言ってませんけど」

口ではそう言いながら、土浦の顔には不満そうな色がありありと浮かんでいた。柚木は黙って近寄り、彼の隣に腰かけた。

「日野さんとケンカしたんでしょ?」

不意にかけられた言葉に、土浦は思わず顔を上げた。柚木は変わらずニコニコしながら、返事を待っているようだった。

「別に、そういうわけでは………。っていうか、何で先輩がそんなこと知ってるんスか?」
「おやおや、キミたちの仲は学院中で知らない人はいないよ。最近2人がぎくしゃくしていることは、天羽さんから聞いた」
「………あのスッポンめ」

土浦は苛立ちをいよいよ隠せないようだった。冷静な彼らしからぬそんな様子を横目に、柚木はくすりと微笑んだ。

「仲直りしたい?それなら、素直に謝ればいいじゃない」
「だから、ケンカとかじゃないって言ってるでしょう。だいたい俺は悪いことはしてないんスから、謝る必要はありません」
「フーン………。だったら、ずっとこのままでいいの?」
「先輩には関係ないでしょう!一体なんなんですか!?」

土浦は勢いよく立ち上がり、柚木を睨み付けた。が、彼の表情を目にした途端、威勢も強気な表情も、一瞬にして消え失せてしまった。

「お前は彼女を泣かせたんだ。その自覚がないようだな」

今まで見たことのない恐ろしい顔。聞いたことのない鋭く低い声。
土浦は得体の知れぬ恐怖を必死でこらえ、言い放った。

「な、何言ってんですか。あいつが勝手に泣いたんでしょう。何で俺が、先輩にそんなこと言われなきゃ………」

突然、柚木が立ち上がり、土浦の言葉を遮るようにそのアゴをつかんで、自分の顔に無理矢理近づけた。

「俺はね土浦。日野には一目置いてたんだよ。好きだとか、そういう野暮な感情ではないけれど、守ってやろうと思っていた」

土浦は、蛇に睨まれたカエルのように、ただ唾を飲み込みながら柚木の目を見つめていた。いや、見つめさせられていた。

「日野がお前と付き合っていると聞いた時は、別に何とも思わなかったよ。いや、むしろ、彼女にいいナイトができて良かったと安心したさ。それなのに、お前が彼女を悲しませるっていうのは、どういうことだ?」

柚木は静かに、しかしドスをきかせながら言い、土浦の顎をつかむ指に力を加えた。

「っ………!!ふっ、ふざけんな!あんたの都合なんか知ら………うっ!」

強がって言い返す土浦だったが、柚木がアゴから頬に指を回して力をこめたため、言葉を失ってしまった。

「ハハハハハ。タコみたいな口になってるよ。………無様だな」
「ひゃ、ひゃめおっ………」

土浦は柚木の手を引き離そうとするも、もう一方の手で払いのけられてしまう。そしてそのまま投げ倒され、馬乗りに押さえつけられた。

「ぐっ………」

一体柚木の華奢な体のどこにそんな力があるのか、体力に自信のある土浦でも、振り払えそうにない。

「なぁ、土浦。素直になれよ。お前も本当は彼女に謝って、仲直りしたいんだろ?」
「くっ、誰がっ」
「強情だね。フフ、これはおしおきのしがいがあるよ」
「離せ!こんなことして、ただで済むと………」
「今は授業中だからね。泣こうがわめこうが、助けは来ないよ。この状態なら、窓からも見えないしね」

言いながら柚木はロープを取り出し、土浦の手足を後ろで縛り自由を奪う。

「やめろ!まさかあんたが、こんな奴だったなんて………!」
「そうだよ。僕はこんな奴さ。日野はとっくに知っていたけれどね」
「なんだとっ………?」

土浦が必死に見上げると、背後から日の光を浴びた柚木の黒い影が、ニヤリと笑っているのが見えた。

「フフフ、そう、日野は皆の知らない俺をしっている。俺も、皆の知らない日野を知っている」
「嘘だ!!あいつは………香穂は俺のっ………!」
「俺の、何だい?」

突如、柚木が土浦の尻を思い切り蹴飛ばした。

「ぐあっ………」
「へぇ。いい顔するじゃないか。そうだな。この際、皆の知らない土浦も、見せてもらおうか」

柚木は土浦の上にまたがり、後ろから彼の鼻の穴に指を入れて持ち上げ、後ろに引いて顔を上げさせた。

「うぐっ!ふがっ………がぁっ!!」
「フハハハハハハ!いい顔だ。こうしてみるとキミも結構かわいいじゃないか。この豚が!」

罵倒しながら、柚木は上からつばを吐きかける。

「があっ………!!」

そしてさらに強く鼻を引っ張る。おかげで土浦は、ほとんどエビぞりになっていた。

「ひゃ、ひゃめろっ!ちぎっ………は、鼻が、ちぎれるっ!!」
「フハハハハハハ!!そうだ!鳴け!みじめに懇願しろ!」

本性を現した柚木に、もはや情けなどはなかった。

「がぁっ!あああっ………!!」

豚鼻を晒したまま叫び続ける土浦。顔を真っ赤に染めて涙を流し、さらに涎までこぼれている。

「きったない顔だな。ん?指に何かついた。………鼻水か。本当に汚いねお前は。俺の手が汚れちまったじゃないか。ええ?」

柚木が悪意をこめて、鼻をさらに引き上げた。土浦は歪んだ豚顔をさらに歪めて泣き叫ぶ。

「んあああっ!!ひゃ、ひゃめっ、てっ………くだひゃ、いぃ!!」
「情けないなぁ。いつもの強気なお前はどこにいったんだよ」

カシャリという音とともに、まぶしい光が土浦を照らした。土浦が涙でボヤけた目を必死に凝らして見ると、柚木が自分の顔を携帯で撮影していた。

「なっ、なに………を………ぐひゃっ」
「いい記念になるからね。日野にも見せてやろうか」

鼻水まみれの鼻をぐりぐりともみつぶしながら、嬉しそうに言う柚木。

「や、やめろっ………やめて、下さいっ!」
「フン」
「がはっ」

突然柚木が指を抜いたため、土浦の顔は勢いよく地面にたたきつけられた。

「さて、これからが本番だ」
「ハァ………ハァっ、くっ、いい加減にしやがれ!このっ、変態野郎!!」

鼻をぐずぐずすすりながら、液体まみれの威厳のない顔で睨み付ける土浦。

「黙れ。お前のみじめな顔を、学園中に晒されてもいいのか?」
「くっ………ううっ………!」

土浦は、情けなくて、悔しくて、涙を止められなかった。ついでに鼻水も止まらない。手が封じられているため、涎もぬぐえない。まさにみじめだった。

「そういや土浦、お前、オナニーのオカズはやっぱり日野か?」

土浦の服の裾で指をぬぐいながら、思いついたように柚木が尋ねた。

「なっ、何言って」
「お前、なんだかんだで日野にぞっこんみたいだしな。おっ」

柚木は、土浦のポケットからはみ出した写真と携帯を取り出した。

「かっ、勝手に見るな!」
「へぇ、やっぱり日野の写真か。ふふ、しかも大あくびとは、いい趣味してるね。うわ、携帯の待ち受けも日野。画像もほとんど日野じゃ………ん?お?」
「やっ、やめろ!返せ!!」

土浦が顔を真っ赤にして叫ぶが、柚木はまるで聞く耳をもたない。

「あっはははは!日野とエロ画像を交互に配置してやがる。これを見比べて脳内変換してるのか?まったく、見かけによらず相当なスケベだなお前。おいおい、SMやスカトロまであるぞ。結構ハードなのがお好きなのかな?」
「やめて………くれ………っ」

浴びせ続けられる罵声に、土浦は反抗する気力まで削がれていった。

「なるほどね。要は実際できないことを日野としているイメージで抜いているわけか。この変態。で、日野とはヤッたのか?」

土浦はそっぽを向いて答えない。柚木の顔が再び閻魔の形相になり、土浦を蹴飛ばす。

「ぐはっ」
「正直に答えるんだ。俺の質問に答えなければ、この写真をお前の携帯から全員に送信するぞ」

土浦は、顔中から汁を垂らして白目をむくブタ顔の自分を見せられ、一気に熱が冷めていく感覚に陥った。

「言うんだ」
「………まだ、キスまでだ」
「そんなことだろうと思ってたよ。あ、もしかして童貞なの?」
「………」
「おいっ!」
「そ、そうだ………」
「ハハハハハハ!お前、日野の前にも女いたんだろう?とんだチキンだな」

土浦の体に、熱が戻っていく。いつのまにか空にはどんよりと厚い雲が垂れ込めている。冷たい風が激しく吹きつけたが、土浦にはその風は感じられず、ただゴウゴウという音だけが、耳から耳へと突き抜けていった。

「じゃあそろそろ、その童貞チンポを見せてもらおうか」
「なっ、やめろ!!」

必死に体をよじらせる土浦だったが、

「おい、逆らっていいのか」

柚木にそう言われると、歯をくいしばって身じろぎをやめた。だが、土浦も頭のいい男なだけはあり、ここで何が何でもやめさせないと取り返しがつかなくなるという恐怖も感じていた。

だが、彼のプライドが、あの写真をばら撒かれるという目先の悪夢を退けることだけを考えさせる。もちろん、それも柚木の計算のうちだ。この土浦という男は、切れ者で、プライドが高い。だがそれだけに、一度堕としてしまえば、どこまででも突き堕としていける。柚木はそう確信していた。

カチャカチャと音を立てて、柚木は土浦のベルトを外していく。土浦はただ顔を赤くして堪えるしかなかった。そしてやがて、ズボンごとパンツをずり下ろされる。

「おいおい、なんで勃ってるんだよ」

もう死んでしまいたいと、土浦は思った。黙っていると、怒声が飛ぶ。

「返事!」
「か、香穂の名を聞かされて………こんなこと、させらた………から………」
「ド変態め。あれ?もしかしてお前マゾ?なに?あのSMプレイ、やってみたい、じゃなくて、されたい、だったのか?」
「ちがっ、違う!!そんなことは、ない………。ただ、香穂が、あいつが、エッチなことしてると思ったら………それだけで………勃っちまう」

笑い転げる柚木。土浦はもはや冷静な思考ができなくなってきていた。

「よーし、じゃ、オナニーしてみろ。今、ここで」

突然の命令に、土浦は血相を変えて怒鳴りつけた。

「ふざけんな!!だいたい、手も縛られてるのに」
「床にこすりつければいいだろう。ホラ、これ見てやれ」

と、日野の大あくびしている写真が、パラリと土浦の目前に落とされる。

「うっ」

土浦の体に、ゾクリと何かが走った。

「ホラやれよ、変態。しっかり見ててやる。それとも、さっきの画像を公開してやろうか?この音声つきで」

『香穂が、あいつが、エッチなことしてると思ったら………それだけで………勃っちまう』

目を見開く土浦。油断も隙もない。やはりこれ以上続けると危険だ。脅迫要素が増えるだけである。しかし、それがわかっていても、土浦のプライドが邪魔をする。何が何でも、写真や音声を流されたくない。

「………くそっ」

ゆっくりと、土浦は腰をゆらして股間を床にこすりつけ始めた。

「うわ、本当にやりやがった。みじめだねぇ。こうして横から見ると、ペニスの様子がよくわかる。皮が伸びたり縮んだり。はは、おもしろいなぁ」

土浦は涙を流しながら、腰をすり続けた。自分が情けなくて、無様で、それがますます快感を煽る。

(なぜだっ………ゾクゾクする。俺は、変態なんかじゃ)

土浦はそんな自分の体に、柚木に対する以上の恐怖を感じた。

「タマもつぶれたりもまれたりしてるぞ。いやー、本当にいやらしいね。この変態」

(変態なんかじゃ………)

「あれ?スピード上がってきてるよ。あーあ、そんな必死になっちゃって。お前、ものすごく無様だよ」

横でカシャカシャと音がする。また、撮られた。だが、それが、嬉しい。

(違う!俺は!!)

「ふっ………うんっ………ハッ、ハッ………っ」
次第にあえぎ声が大きくなる。

「おーおー、汚いケツがプルプル震えてら。この淫乱なオス豚が!」

パシンッ

「うがぁっ!?」

土浦の尻に激痛が走る。柚木が土浦のベルトを鞭のようにふるっているのだ。一瞬腰の動きが止まったが、再び激しくこするつける。

ペシン パシン

「はうぁっ!うぐっ!………ぃ」

「ん?なんだ?言いたいことがあるならはっきり言えよ。憧れのSMだろ」

ベシンッ

「ひゃがっ………アーッ!!イイっ!!イイ~~!!」

土浦の中で、何かが壊れた。尻を打たれながら、腰を高速で前後に動かす。あまりの快感に舌を突出し、涎鼻水をまき散らして白目をむき、見事なアヘ顔を晒した。

「アッハッハ!ついに出たな。マゾ豚の本性が」

柚木は面白そうに、一層力をこめてベルトを振り下ろす。

「あひぃっ!!あひっ、おひっ、おっ………ヒィィイイイイイッ!!!」

もはや普段の、頼もしく、スポーツ万能で頭のいい土浦の姿はなかった。そこにあるのは、快感にのまれて尻を振る、醜いブタの姿だった。

「イクときはちゃんと言えよ、ブタ」
「うっ、おおおおおっ!いっ………イクッ!!イキま、すぅぅっ!!あひゃぁああ~!!!」

絶叫と同時に、土浦のモノから、ビュクビュクと勢いよく精液が発射された。ビクビクと震える土浦のペニスは、こすり続けられながらゆっくりと動きを弱めていき、全面に自らの精液を絡めて、動きを止めた。

「はひっ………はひっ………おひっ………」
「まさかここまで狂っちまうとはね。そんなにケツを叩かれるのがよかったのか?」

カシャカシャと撮影を続けながら尋ねる柚木。放心状態の土浦は、ハァハァと喘ぐだけで質問に答えられない。顔中から液体を垂れ流し、目の焦点もあっていない。

「おい、聞いてるんだよブタ。この写真、全部まき散らすぞ。それともお前は、その方が嬉しいのか」

汚いものを扱うように、柚木は土浦を足でひっくり返して仰向けにした。

「や、やめへぇ、くらひゃ………いぃ。お、俺は、よかっ……きもひ………よかっ、はぁ」
「フン。哀れだな。10分前とは別人じゃないか」

そう言って柚木が土浦に歩み寄ったそのとき。

「あっ………ああっ!!だめっ、でっ、出るっ……ううぅっ!!!」
「!!!!」

柚木がソレに気づいた時には、もう遅かった。

ジョロオオオオオオォ

アーチを描いて、土浦の小便が、見事に柚木の顔に命中した。

「あっ………あああああっ、すっ……すみませっ……」
「キサマ………この俺様にこんな汚い、臭い、小便なんざひっかけやがって………。許さねぇ」
「やめっ」

「そうだな、この際だ。お前のためにも、日野に素直に謝罪できるよう、人格まるごと変えてやる」

「はっ………よせっ!やめてくれっ!!」

恐ろしい言葉に我を取り戻した土浦だったが、もう遅かった。

ブスッ

「ぐぎゃああああああああああ!!!」

柚木が自分のフルートを、土浦の肛門に突き刺したのだ。

「あーあ。また買い直さないとな。さて、お前には、このフルートと制服と、そして俺のプライドの弁償をしてもらわなきゃならないんでね。まぁ顔はそこそこだし、ある程度は稼げるだろ」

ポツポツと、暗い雲から雨が落ちてきた。
柚木はフルートを滅茶苦茶にかき回しながら、土浦のペニスをきつく握りしめる。

「ぐあああっ!ひぃああああっ!やめっ………やめえぇぇぇっ!!」

「ちっ、手が小便まみれだ。まぁいいか。どうせ上から下まで小便まみれだ。責任はとってもらうぞ。もうお前がどうなろうが、俺の知ったことじゃない」

「ひぃっ……イタッ、イイっ!!い、いか、イカせっ………」
「まだだっ!!」
「うっ……ぶごっ………ふんごおォ~!!!」

2人とも、狂っていた。

「よし、一回イカせてやる。そしたらあと10回だ」
「ふ、ふがあぁぁぁ!!イウゥ~~~~!!!」

ビクンビクン ビュルビュルビュル

同時に、雷が鳴り響き、2人の頭上に豪雨が降り注いだ。

 

 

 

日野は、毎日いてもたってもいられなかった。恋人の土浦が、激しく言い合ったあの日以来、姿を消してしまったのだ。
クラスメイトの実川の話では、あの日、土浦は午後の授業に現れず、教室に荷物を残したまま家にも帰ってないらしい。そして、今日でもう一週間になる。

「日野ちゃん、元気だしなよ」

親友の天羽が、泣きじゃくる日野を励まそうとするが、効果はない。

「だって、だって私のせいで、土浦君っ………ううっ」

他の仲間たちも日野の家に集まり、どうにか慰めようとしている。

「日野さん、君のせいじゃないよ」
「そうだよ日野ちゃん。そのうち、元気に現れるよ」

「あの………、月森先輩、柚木先輩。ちょっといいですか」
「なんだ?志水くん」
「西君たちが、その、ゲイサイトで、土浦先輩らしき人を見た、って………」
「………ああ、その話なら俺も聞いた。だが、そんなことは、あの土浦に限ってあるわけがないだろう」
「でも、彼のような真面目な人間ほど、裏でとんでもないことしてたりするしね」
「柚木先輩!!」
「僕だって、信じたくはないよ」

そう言ってうつむいた柚木の顔には、不気味な笑みが浮かんでいた。

その日、土浦から日野に、メールが届いた。話があるから、街外れの廃倉庫に一人できてほしいというのだ。場所が場所だけに不審に思ったが、一週間ぶりの恋人からのメールに、日野は心躍らせて倉庫へと向かった。

「土浦君………いるの?」

暗い倉庫の奥に、人影が見える。何やらひどい悪臭が立ちこめているが、日野は気にせずに人影へと走り寄った」

「か………かほっ……」
「土浦君!………っ!?いっ、イヤアアアアアァァァァ!!!」

「あ、あは………は…あ、会いた、かった、ぜ……かほっ
おひっ、ぶ、ブタの分際で、な、生意気いって……ご、ごめんなひゃいっ
だ、だかりゃ、お、……オレを、飼ってくらひゃいっ……イヒィ!!」

土浦は、いや、土浦梁太郎だったモノは、完全に理性を失っていた。白目を剥き、涎鼻水を垂れ流し、舌を突き出して全裸で腰を振っている。
肛門とペニスには大きなバイブがくっついて、ブルブルと震えている。首には首輪とチェーンがつき、犬のように柱につながれている。その周囲には、異臭を放つ大量の大小便と精液の乾いた跡に、真新しい精液。そして、ドッグフードの入った皿。

土浦はただ必死に快楽をむさぼるように、奇声を上げて床オナにふけっていた。

「アヘ………アヘアヘ、アヒッ…… か、かほ…… んほっ♪
も、もういちど、オレと…つきあっへ…んほ、くらひゃイヒィ♪
もっろ、オレをいじめてぇ……お、い、イクイクイクぅううううう?!!!」

「いやあああーーーーーー!!!!!」

日野は気絶し、やがて土浦ともども保護された。
だが、土浦は、二度と人間には戻らなかったという。

(終)