「ま、ざっくりこんなもんか」
世を憎むダウナー系ラッパー、矢戸乃上 珂波汰(やとのかみ かなた)、19歳。
ファントメタルというアイテムを使って幻影を作り出し、ラップとパフォーマンスで観客を魅了する「Paradox Live」で見事優勝した双子のユニット「cozmez(コズメズ)」のリーダー、MCネーム「KANATA」だ。
スラム育ちで大人に虐げらて育ったため、口が悪く、面倒くさがりで、弟以外に心を開かない。
そんな珂波汰が、狭いアパートの一室で、弟以外の男と一緒に曲を作っている。もちろん、嫌々ではあるが。
「おお。……おおーっ!いいな、この音の選び方!さすが珂波汰だ!」
「……ふん。たりめぇだろ」
目をキラキラさせて熱気を放っているのは、MCネーム「SUZAKU」こと朱雀野 アレン(すがさの あれん)。ライバルチーム「BAE」のリーダーだ。どうしても珂波汰と一緒に曲を作りたいと、ほとんど無理やり押しかける形で通ってくる。
アレンは自他ともに認めるヒップホップ馬鹿だ。なぜかツンデレ系ラッパーなどと公称してはいるが、実態は真逆。どこまでも素直で真っすぐで暑苦しく、特に音楽のこととなると静止が利かない。目を輝かせて話し始めるといつまでも止まらないオタク気質だ。
最近は珂波汰の音楽にえらくご執心で、ありがた迷惑なことに頼んでもないのに熱烈に応援してくる。一応、ライバルであり、そして多分、アレンからは友人だと思われている。珂波汰としてはこの暑苦しさには難渋していた。
弟の那由汰は出かけていて不在だった。アレンが来るときは決まってそうだ。邪魔をしないように気を使ってくれているのだろうが、珂波汰にとってはこいつと二人きりにされることは迷惑でしかない。そもそも、那由汰の傍にいれないことが不満だ。
那由汰は那由汰で、友人の四季と一緒にいるのだろう。那由汰に友人ができたのは喜ばしいことだし、那由汰を支えてくれた四季に感謝はしている。だが、それはそれとして、那由汰が自分そっちのけで四季とばかり過ごしているのは、やはり面白くない。
珂波汰は重度のブラコンだった。
「おい。おいって、KANATA。聞いてるのかよ」
「あ?んだよ」
「そんな怖い顔するなよ。一緒に曲を作る仲間だろ?」
「誰が仲間だ。暑苦しい。で、なんだよ」
「やっぱいいよなぁ、KANATAの音。耳に残るし、体の中に浸み込んでくる」
「そうかよ」
「最高に心地いい。あー、なんか気分が高まってきた!」
「そんなのいいから、お前もとっとと手ぇ入れろよ。なんか意見とかねぇのかよ」
「意見。意見な」
その時、アレンの顔がにわかに紅潮したことを、珂波汰は不思議に思った。いつも落ち着きのないアレンだが、やけに体を揺すってソワソワしている。
「んだよ、気持ちわりいな」
「ごめん、曲作りとはちょっと話がそれるんだけどさ。せっかくの機会だから、聞いてほしいことがあるんだ」
「あんだよ」
「絶対に笑わないでくれよ」
「あー、はいはい。早く言えよ」
なんか妙だ、と珂波汰は思った。珂波汰の前でこいつがこんな風にモジモジする姿は、あまり見たことがない。おまけに顔も妙に赤いし、目の光には変な妖しさがある。
アレンは少し言い淀んだ後、珂波汰の目を真っすぐに見つめて言った。
「俺、KANATAの音で、お前の紡ぐリリックで、興奮するんだ」
「はっ、今更そんなことかよ。今まで何回聞かされたと」
「そうじゃなくて」
強く静止して、急に声のトーンを落とす。
「……その、興奮って、つまりその、あれだ、ムラムラするというか」
「……は?」
「あーもう、男同士だからいいよな。要するに」
そして、アレンはとんでもないことを口にした。
「勃起するんだ。cozmezの歌聞いてると」
「な……」
「そんで、お前の声聞きながら、オナニー、したり、してる」
「お、オナ……」
珂波汰は口をあんぐり開けたまま固まってしまった。笑われなかったことでいけると思ったのか、アレンはスイッチが入ったように熱を込めてまくし立てる。
「お前の魂の籠ったリリックが!俺の心を、股間を、揺さぶるんだ!ふつふつと血が沸き立つっていうかさ。生命力が!その、精液が!睾丸から無尽蔵に溢れてきて。ペニスが、これ以上ないってくらい、熱くギンギンに反り勃つんだ!お前の息遣いひとつひとつが、耳の中から俺の体をかき乱してるようで。もうホント、ヤバくてさ!艶っぽいとかエロいとか、そういう次元じゃないんだよ!一語一語で全身が刺激され、体中からペニスに……チンコに!チンコに血が集まってくるんだよ!cozmezのサウンドが、リリックが!俺の全身を包み込んで、愛撫している感覚がさ、なんていうのかな、楽園?それこそヘヴン状態ってやつなのかな?気が付いた時には夢中でチンコ扱いてんだ!ホント、自分でもおかしいって思うこともあるけどさ。でも、よく考えたら必然なんだよな。KANATAが今までの人生全て盛り込んで、熱い思いを込めて作り上げた歌なんだ。心にも股間にも、響かないわけがないんだよ!ああ!思い出しただけでホラ!」
唾を飛ばして熱弁していたアレンが、ついにチャックを開けてソレを取り出した。言葉のとおり、やけに大きなペニスが異常なまでに膨れ上がってアレンの中心に屹立している。
珂波汰は思わず「ひっ」と悲鳴を上げて座ったまま飛びのいた。が、すぐに壁が背につき、追い詰められる。迫るアレン。珂波汰の視界に、いきりたった巨根が割って入る。
「見ててくれよKANATA!今、お前達の曲、かけるから!」
そう言って返事も待たずにスマホからcozmezの曲を流し始める。
「ああ゛~っ♡ イイッ♡ やっぱ最高だよcozmez!」
イントロがかかると同時に恍惚とした表情でペニスを扱くアレン。濁った目はすぐ傍にいる珂波汰ではなく、どこか虚空を見つめている。本人の告白のとおり、珂波汰にではなく、珂波汰の音楽に興奮しているのだ。度を越したヒップホップオタクのアレンのこと、性癖までこじらせて、音フェチに目覚めていたとしてもおかしくはなかった。
珂波汰は突然の事態に頭が追い付かず子ネズミのように震えていたが、ようやく罵声を絞り出した。
「い、いいい、いい加減にしやがれ!この変態野郎が!!前々から頭のおかしい奴だとは思っていたが、これほどとはな!失せろよクソホモ!ちょん切んぞそのキタねぇチンポ!」
だがこれはアレンには逆効果だった。
「おおっ♡ いいライムだ!天才だなKANATA!うおお゛ぉっ♡」
「韻踏んでんじゃねえよ!何なんだよ出てけよ!キメェんだよ馬鹿!ぶっ潰すぞタマ!」
「んおお゛っ♡ いいぞっ!もっと、もっと罵ってくれ♡♡」
涎を垂らして更に激しくチンポを擦るアレン。珂波汰の目の前で揺れる亀頭。皮が前後に動き、尿道口から零れて光る先走り汁まではっきりと見えてしまう。眼前の肉棒から、汗と小便の混ざった仄かな悪臭がダイレクトに鼻孔に届く。おまけにグチョグチョという卑猥な水音が、自分たちのリリックに乗って耳に届くのだからサイアクだ。
「な、なんだこれ。どういう状況だよ……」
壁とチンポに挟まれた珂波汰は身動きが取れない。少しでも身を起そうものなら、鼻先にアレンのチンポがぶつかってしまう。必然的に、アレンのチンコを、オナニーを、正面から拝み続けることになる。
「あ゛ぁ~っ♡♡♡ コズニーは最高だなぁ! んおおお゛ォ~♡」
チンポ越しにアレンの顔が見える。斜め下からみるその顔はひどく不細工だ。阿呆みたいに開いた口から涎がダラダラ零れてくるし、丸見えの鼻の穴はひくひく蠢き、目は半ば白目を剥いている。
これがあのSUZAKUなのか。暑苦しくて面倒な馬鹿だが、音楽にかける思いは強く、腕も確かだ。心の内でいいライバルだと思い始めてもいたが、そんなこいつの本性は、理性の欠片もないオナ猿だったのか。
それにしたって何か変だ。いくらこいつが真正のヒップホップ馬鹿の変態でも、人前でチンコ出して扱くなど正気の沙汰ではない。
恐怖と驚愕で高鳴る心臓を抑えながら、珂波汰は必死で状況を分析しようとした。が、それもそこまでだった。
額に生暖かい液体がべちょりと落ちた。アレンの涎だ。抗議しようと睨んだところで、アレンはアホ面をさらに歪めて雄たけびを上げた。
「ん゛っほおおおおおおお゛ォ~~ッ♡♡♡」
ペニスを扱く手の動きに激しさが増し、尿道口に濃い白濁の液体がぷくりと膨らむ。
出る。
珂波汰の顔が蒼白になった。丁度cozmezの曲が終わった瞬間だった。
「や、やめろおおおお゛ぉ~っ!!ひいいっ!!」
アレンがぶちまけた精液が、ゼロ距離から珂波汰の顔面に降り注いだ。
「うお゛ぉっ!きめぇっ!ぐぼっ!おええっ!」
髪の毛に。額に。口の中に。ビュクビュクと降り注ぐアレンの若く健康的な精液が、珂波汰の綺麗な顔を汚していく。体中がベトベトした臭い液体に塗りつぶされる。
「あ゛あぁァ~~~~っ゛♡♡♡♡♡」
アレンは甲高い声を上げて、チンポを小刻みに扱き、竿の中の精液を絞り出すように珂波汰にぶっかけ続けていた。その顔はだらしなく緩み、恍惚としている。
「き、気持ち良すぎるぅ♡♡ KANATAの曲でシコってKANATAの顔にぶっかけるなんて♡ 最高だぞKANATAァ~~っ♡♡♡」
「ひいっ……うぁ……うあぁ……」
珂波汰は為すすべもなくアレンの精液を浴び続けていた。
「トリップ反応?なにそれ。トラップ反応じゃなくて?」
高層マンションの一室。女性にしか見えない容姿をした美少年、アン・フォークナーが、「微笑みの貴公子」ことモデルの燕夏準(ヨン・ハジュン)に聞き返した。二人ともアレンのチームメイト兼ルームメイトだ。アレンは珂波汰の家に押しかけているため、二人で食事をとっている。
「ええ。先ほどある筋から入った情報です。ファントメタルがもたらす副反応の一種で。ご存じの通り、トラップ反応はメタルを使って幻影を出した後に発現し、過去のトラウマに苛まれるものですが……。
今回報告された【トリップ反応】という現象は、異常なまでの性的興奮に理性を失い、自ら進んで痴態を晒すことで性的欲求を満たすことしか考えられなくなる。品のない言葉を使えば、公衆の面前だろうがお構いなしに自慰行為をおっぱじめて何度も絶頂してしまう、というものらしいですよ。それも、誰にも知られたくないような自分の秘密や性的嗜好をカミングアウトしながら」
「なにそれ、サイアクじゃん。人生終わるレベルでしょ」
「こんな惨めな終わり方は御免ですね。ただ、これはトラップ反応のようにライブ後に必ず起こるわけではなく、メタルを使う人間が性的に興奮する度に進行し、興奮が一定値に達した時、性欲の波となって一気に押し寄せてくるものらしいです。日頃からしっかりと自制できていれば、何も恐ろしいものではありません」
「あー。でもそれ、かなり危ないよね、アレンのやつ」
「同感です。他人の性処理姿なんて見たくはありませんが、まぁ、アレンの目も当てられない醜態というものには、多少興味はありますね」
「やめてよ。ちょっと想像しちゃったじゃん」
アンと夏準は揃って苦笑する。
「……ですが、他人のトリップ反応にはあまり関わらない方がいいですよ。どんな形であれ、他人の性的な姿には多少なりとも感化されてしまうものです。巻き込まれて自分まで……なんてことになりかねませんからね」
「はぁっ、はぁっ♡ はあぁ゛~♡ あ゛ぁァ~ッ♡ スッキリした♡」
アレンは左腕で壁を抑えて体を支え、右手でペニスから残滓を絞り出し、射精の余韻に浸っていた。
ペニスの先が何かに触れる。とろんとした目を向けると、亀頭の先にあったのは珂波汰の額だった。亀頭から漏れたドロドロの精液が珂波汰の顔をゆっくりと流れている。よく見ると、顔だけではなく、珂波汰は全身精液まみれで、全身の力が抜けたように壁にもたれかかっていた。
惨状に気が付いたアレンの血の気が引いていく。
「かっ、KANATA!?おいっ、大丈夫かKANATA!?ご、ゴメン!俺、なんてことをっ……!」
今の今まで性器を握っていた精液まみれの手で珂波汰の肩を揺らすアレン。心底心配して泣きそうな声を上げているが、丸出しのペニスからは精液が糸を引いている。
そのうちに珂波汰の顔に生気が戻ってきた。ザーメンまみれの眉をしかめてアレンを睨む。
「くせぇんだよ!変態オナ猿野郎!」
「うごお゛ォっ!!?」
チンコを蹴り上げられたアレンが股間を抑えてひっくり返る。
珂波汰は手や袖で顔についた精液を拭うが、粘つく体液はそう簡単に取れるものではない。
「くっせぇ……。なんつーことしやがんだ」
「ほ、本当にすまなかった!服は弁償する!この部屋に風呂はないんだよな。今すぐ銭湯に……」
「うるせぇよ!それどころじゃねえんだ!」
「……KANATA?」
床に膝をつき手を合わせて謝罪していたアレンが顔を上げ、ようやく珂波汰の様子がおかしいことに気づいた。
精液まみれの顔でアレンを睨みつけてはいるが、その顔は赤く染まり、目はどこかトロンとしている。
「こんなもん、ぶっかけられたら……」
そう言いながら珂波汰が弱弱しく立ち上がり、そして。
「俺までチンポ勃っちまうじゃねえか♡♡!!」
思いもかけないことを叫び、ズボンからペニスを引っぱり出した。
床に這いつくばったアレンの目線のすぐ先で、珂波汰の性器がびんびんに反り返っている。
「……へっ?」
アレンは事態を飲み込めずに呆然とソレを見つめるしかない。珂波汰はアレンの視線を気にも留めずにペニスを掴み、上下に動かし始めた。まるで数分前のアレンのように。
「か、KANATA?お前、何やってんだ?」
下半身丸出しの自分のことは棚に上げて、ただ目を丸くするアレン。
二人は知る由もないが、アレンのトリップ反応が珂波汰に伝染したのだ。アレン同様、珂波汰の内に秘められていた性癖と性欲が、冷静という堰を切って溢れ出していく。
珂波汰は「あー」だの「ふぃー」だのと気だるげな嬌声を零しながら、ゆっくりとペニスを擦る。アレンの情熱的で激しいオナニーと比べると、珂波汰の自慰はまさにダウナー系。なで肩、猫背でだらんと立ち、右手で撫で上げるように自身を愛撫している。
だが、次第に熱を帯びたように動きが速くなり、股もガニ股に開いていく。目つきもきっと厳しくなり、アレンの向こうのどこか遠くを睨みつけている。
「あー!くそっ!クソクソッ!どうせ那由汰も今頃あいつとシッポリやってんだろ!?あーあー、俺をさしおいてよ!愛する弟が他の男とイチャイチャしてるってのに、何で俺はこんな奴のくっせぇザー汁ぶっかけられてんだよ!?意味わかんねぇよ!こんなの……こんなのってよぉ!……おおお゛ぉ♡♡♡」
寄り目になって顔を歪め、焼き切れそうなほど激しく性器を扱く。一見気だるげでありながら熱が入るとどこまでも激しくなる性格が、オナニーにも表れている。そして、次の瞬間。
「惨めすぎて、興奮しちまうだろぉがぁ!!!♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡」
珂波汰のペニスから勢いよく精液が飛び出し、アレンの頭に振りかかった。珂波汰は期せずして、ものの数分で復讐を成し遂げたのだ。
「はぁっ♡ はああ゛っ♡♡ はああ゛ぁーーっ♡♡♡♡♡」
口端から涎を垂らして余韻に浸る珂波汰。だがすぐに自分の痴態を思い出し、顔面が蒼白になる。
「なっ……。なっ、なっ!? いったい、何をっ……!?」
人前でチンコを丸出しにして、センズリをぶっこき、更にはブラコン全開でネトラレ妄想によって射精する。そんな狂気じみた痴態を、よりにもよってアレンの前で晒してしまった。
「ち、違う!ちげぇよこんなの!お、おい、お前!今すぐ忘れろ!忘れねえとぶっころ……」
アレンの肩を揺さぶっていた手が止まる。気づいてしまったのだ。
アレンが恍惚とした笑みを浮かべて、股間のモノを再び膨らませていることに。
「よくわかんねぇけど。俺もお前も、なんかおかしくなっちまってんだ。ここんとこ疲れがたまってんのに、徹夜なんかしたせいだろ」
「あ、ああ、そうだな」
「だからお互い様だ。今日のことは、明日には全部忘れろ。俺も、お前のやったことは、このくっせぇザーメンと一緒に水に流してやる」
「あ、ああ!そうだな!そうしよう!」
「ちっ。だからよ……」
珂波汰がため息をつき、吐き捨てるように続けた。
「今日はとことんつきあえや」
つい先ほど、勃起したアレンをぶん殴った珂波汰は、自分のペニスもまた異様な速さで回復し、膨れ上がっていることに気づいた。
彼らなりにいろいろ考え、話し合った結果。疲労と徹夜でハイになって気がおかしくなっているのだろうという結論に達した。トリップ反応は興奮状態によってもたらされるメタルの暴走なので、この推理はあながち間違ってはいない。
なお、アレンの痴態に珂波汰が、珂波汰の痴態に再びアレンが、そしてアレンの痴態にこれまた珂波汰が触発されて興奮し続けているため、トリップ反応は衰えることなく持続している。
ともかく、こうなったら気とペニスが収まるまで、とことん淫欲に溺れてみよう、ということになった。ヒップホップを作り上げるのに、欲望や感情をむき出しにするのは効果的だという適当な言い訳をつけて、二人して暴走する性欲に負けたのだ。
「わ、悪いな。もとはと言えば俺が突然……、へ、変なカミングアウトして、お、オナニーなんか始めちまったせいで。KANATAまで付き合わせて……」
「あー。もういいって。……俺も溜まってたんだよ。いつもは那由汰がいるから、あんまり自慰もできねえし……」
「ああ、なるほど。俺には個室があるけど、お前達は同じ布団で寝てるんだよな」
「う、うるせぇよ」
毎晩那由汰と抱き合って眠っていることを思い出すだけで興奮してしまう。
(那由汰を巻き込むわけにはいかねぇ。あいつが戻ってくる前に、出すもん出し切ってスッキリしねぇと)
珂波汰は部屋の隅の床板を外した。弟にも隠しておきたい私物をその下にしまっている。そこから、両先端が卑猥な形をした金属の棒を取り出した。アダルトグッズのバイブ機能付き双頭ディルドだ。
「……これ、使ってみっか」
「なんだ、これ」
「知らねぇのかよ。これだから温室育ちの坊ちゃんは。スラムの路地裏にはこんなのがゴロゴロ転がってんだよ」
拾ったのはほんの出来心だった。スラムのドブネズミゆえの習性か、落ちているものはとりあえず拾ってみたくなる。那由汰と使ってみたいという思いがないでもなかったが、最愛の弟に手を出すわけにもいかず、結局捨てようと思いながら今まで忘れていた。
「へぇ。それで、どう使うんだ?」
「どうって……」
珂波汰はさすがに照れくさくなって顔を赤くする。が、それによってますます興奮し、チンポが震える。トリップ反応で恥も屈辱もすべて性欲に変換されていた+。
今さら躊躇ったって仕方がない。とことん馬鹿になってやる。
珂波汰は覚悟を決めて、壁にもたれかかって座り込んだ。そして、アレンを見上げて大きく両足を上げ、股を開く。
「か、KANATA!?」
珂波汰の肛門が丸見えになった。アレンは驚き恥じらいながらも、ひくつく穴を凝視している。あんなに出したばかりなのに、アレンのペニスはビンビンに勃起していた。珂波汰が小馬鹿にするように笑う。
「はっ。野郎のケツ見て興奮してんのかよ。音以外にも興奮できんだな」
そういう珂波汰のペニスも、開いた股の間で元気におっ勃っている。珂波汰はその先端についていた精液を掬い取ると自分の肛門に塗りたくり、指を入れて穴をほぐしていく。アレンは生唾を飲んでその様子を見守っていた。
「そろそろいいか。……おら、見てろ」
ある程度広げると、珂波汰は右手に持った棒の先端を自分の肛門にあてがった。
「こう、使うん、だ、よっ!おっ!お゛ぉっ♡ お゛♡ほおおオ゛ォっ!?♡♡♡♡」
珂波汰の尻に極太のディルドがぐいぐいと押し込まれていく。尻の穴が口のようにすぼまって、ペニスを模した太いモノを咥えていく様は圧巻だった。
「お゛お゛お゛ォ゛!!!んおおお゛ぉっ!!!!」
必死の形相でケツに棒をねじ込んでいく珂波汰。目を見開き、涎をダラダラ零すその顔は鬼気迫るものがあった。
「お、おい!大丈夫か、KANATA!?」
アレンは心配そうにおろおろと体を揺すっているが、それでも珂波汰の痴態を凝視してチンコをおっ勃てている。
「な、なにして、やがる。てめぇも、さっささと挿れろ、よっ!、おほお゛♡」
「えっ。お、俺も、いれるのか?」
「っ♡ はぁあ゛っ♡ たりめぇだろっ! 反対側! 使えっ! んおお゛♡」
珂波汰の尻から生えた棒には、もう一つ肛門を貫くためのペニス型のヘッドがついている。尻の穴など排泄のためにしか使わないと思っていたアレンは困惑し、恐怖に満ちた目でそれを見ていたが、
「ぁんっ♡ おお゛ォっん♡」
などという珂波汰の嬌声を聞くうち、居ても立ってもいられなくなった。音フェチ、声フェチのアレンは、珂波汰の下品な喘ぎ声に理性を溶かされている。珂波汰の尻の傍へ座り込み、荒い息を吐いて問いかける。
「ど、どうすればいい?」
「お、俺がお手本、見せてやった、ろうがっ! んお゛っ♡ こ、怖ぇなら、よぉくしゃぶって濡らしとくんだな」
「しゃ、しゃぶればいいのか」
アレンは言われるがまま、ペニスのような棒におずおずと手を伸ばし、顔を寄せる。そして、躊躇いがちに舌を出して、チロチロと先端を舐める。
「んあっ。べろっ、べろっ。に、苦いな。おえっ。ぺろっ、ぺろぺろっ」
「んはっ♡ まるで女だな。カマトトぶってんじゃねぇぞ♡ んひっ♡」
ウブなアレンを、尻にディルドを差している男が楽しそうに煽る。煽られるうち、アレンのディルドへの愛撫はどんどん激しさを増していった。マゾッ気もあるアレンは、珂波汰の声で卑猥になじられるだけで興奮するのだ。
まるで珂波汰のペニスを舐めているかのような錯覚に陥り、舌を伸ばしてべろんべろんと唾液を塗り込んでいく。……実際は珂波汰の尻から生えた模擬ペニスなのだが。
「べろおっ♡ アハッ♡ お、俺、なんか変だ。楽しくなってきちまった。べろっ♡ んべええ゛ェッ♡♡」
「……ッ! え、エロいんだよ、このサルッ♡」
普段一本気で熱血漢のアレンが、だらだらと涎を垂らしてチンポを舐めしゃぶっている。
その浅ましいギャップに興奮して、珂波汰のペニスがぶるぶると震える。
「あ、ありがとう。お前ほどじゃないけどな♡ ……んっ♡ んぁっ♡ ……んばぁ♡ こ、これくらいでいいか?」
「……知るかよ。待ってやんだ。早くしろ」
「お、おう」
ディルドはすっかりアレンの唾液に塗れてベトベトになっていた。アレンは先ほどの珂波汰を真似て、自分の体についた珂波汰や自分の精液を掬い取り、肛門を広げていく。あんあんと甲高い嬌声を漏らして尻をいじくり回すアレン。珂波汰は生唾を飲んでアレンの尻を見つめていた。
アレンは今では一端のラッパーではあるが、もともとは育ちが良く品のいいボンボンで、根は行儀正しく生真面目な男だ。そんな奴が、スラム街に落ちていたチンポ型のディルドを娼婦のように咥え、自分のケツの穴を拡げている。
(やべぇ。こいつ、普段鬱陶しくてむさ苦しいくせに……エロいじゃねえか♡)
珂波汰が鼻息荒くアレンの痴態を見つめていると、
「ええっと……。じゃ、じゃあ。挿れます!」
突然アレンがそう宣言し、オモチャのペニスを肛門にあてがった。
「あ、おい、そんないきなり……んオオ゛ォッ!!??」
静止する暇もなく、珂波汰の尻に激痛が走る。尻に刺さった双頭ディルドにアレンの体重がのしかかってきたのだ。
「うごおおお゛ォーーッ!!??♡♡♡ バカッ! もっとゆっくり……おぎょおおお゛ォッ!!???♡♡♡♡」
「ひぎいいっ!!いでぇっ!いでぇのに……っ!なんらこれぇっ!ケツがっ!こんなっ! きもひぃっ♡♡♡ なんれえ゛ぇっ♡♡♡」
アレンは白目を剥いて未知の痛みと快感に溺れている。もがくアレンのせいで、珂波汰の尻の中で金属の棒がかき回される。
「ンホぉッ♡♡ おごっ♡♡ す、すっげぇ♡ おぼっ♡♡ おげええ゛ェ~~ッ♡♡♡」
珂波汰がアヘ顔を晒して悲鳴交じりの汚い喘ぎ声を垂れ流す。トリップ反応のせいで、痛みや苦しさ、圧迫感がすべて快楽に変換されている。
二人は床に手を付き、脚を絡めてぐいぐいと尻を押し付け合う。
「おお゛ォほッほおおォ~~ッ!!!♡♡♡ これ、ヤバい!! ひっ♡ 一人でチンポしごくよりっ♡ ずっと気持ちいいなっ……ぁあひいい゛ィッ!!??♡♡♡」
「んひいぃっ♡♡ くそがっ♡ 那由多じゃなくて♡ こんな奴とっ♡♡ おほっ♡ アナルで繋がっちまうなんてぇっ♡♡ んオおお゛ォッ♡♡♡♡ チンコにくるっ♡♡」
珂波汰のペニスがブンブンと上下に揺れ動く。それに呼応すようにアレンのモノも震えていた。尻から伝わる相手の鼓動。混ざり合う吐息と喘ぎ声。二人が一つになったような一体感。
突然、アレンが叫んだ。
「アナル! KANATA!ANARU!SUZAKU! 俺達、アナルで繋がってるぞ!」
韻を踏んでいると言いたいのだろう。
「くっだらねぇ……♡ んおっ♡ この、ヒップホップ馬鹿♡♡ ちったぁ余裕出てきたみたいじゃねぇか。でもなぁ。おほっ♡ これで終わりじゃねえぞ♡ こいつはただのディルドじゃねぇ、バイブ付きだ」
「ば、バイブレーション……!?」
「尻の中に稲妻走るぜ♡ おら、覚悟はいいかよ♡」
「イヒッ♡ お、俺の尻、壊れちまうんじゃ……♡♡」
アレンの額に冷や汗が浮かぶ。が、その口元はニンマリと吊り上がっていた。
(こいつも真正のマゾ野郎だな♡)
珂波汰も人のことは言えない。尻穴でがっぷりとディルドにかぶりつき、更なる刺激への期待にペニスを膨らませている。
アレンなんかと連ケツしてバイブでケツアクメをキメるなんて正気の沙汰ではないが、今夜は思う存分馬鹿になって淫欲に溺れると決めたのだ。今更ためらうことなんてない。
「おら、イクぜぇSUZAKU♡♡♡!」
「い、イこうKANATA!二人でDopeな絶頂、キメてやろうぜ♡♡♡!」
珂波汰がリモコンのスイッチを押した。
二人の体を貫くディルドが、物凄い勢いで振動する。
「ンぎゃああああ゛ァァーーーッ!!!??♡♡♡♡♡」
「お゛ッへええええ゛ェェ~~~ッ!!!??♡♡♡♡」
珂波汰とアレンの野太い喘ぎ声が真夜中のアパートに響き渡る。隣の部屋から壁を蹴られた。それでもけたたましい嬌声は止まらない。
二人とも白目を剥き、涎を飛ばして快感に狂う。
無意識に尻をぶつけ合い、激しく暴れるディルドを肛門で踊り食いする。
バイブの振動に連動するように、二本のペニスも激しく震えていた。
「おぎょおおおおお゛ォォ!?♡♡♡♡ やべええ゛ぇっ♡♡ ォほお゛ぉっ♡ 頭、ブッ飛んじまう゛っ♡♡♡ ほぎょオ゛ォ~~ッ!!♡♡♡♡」
「イグイグイグッ♡♡♡ん゛ッほおお゛おォォォ♡♡♡♡♡ 尻がッ♡ ブッ壊れるゥ♡♡♡ か、珂波汰のアヘぎ声♡♡ 最高にエロい゛ィ♡♡♡ あへえ゛ッ♡♡ イグッ♡ 俺の思い♡ イキザマで証明するうう゛ゥッ♡♡♡♡」
「「あッへええええええ゛ぇーーーーッ!!!♡♡♡♡♡♡」」
二人のペニスから同時に生臭い精液が噴水のように吹き上がり、互いの体をベトベトに汚していく。しばらく悶絶したまま射精し続け、半ば意識を失った後も、止まらないバイブに体とペニスを揺さぶられ続け、最後の一滴まで子種を吐き出していった。