Dr.ゲドーと男根信仰(中)

※『Dr.ゲドーと男根信仰(上)』の続きです。

 

 

 

やれやれ、この二崎(ふたざき)という男。伝説の壊し屋だかなんだか知りませんが、催眠にかかってしまえば大したことはありませんね。懐からジャックナイフまで取り出した時には流石にびびりましたが、金縛りをかけてやれば簡単に動かなくなってしまいました。その隙に納屋に運び込み、壁際に立たせて大の字に固定します。あーあ、これじゃあまだ露出狂の中高生の方が手ごわかったですよ。
ですが裏社会でのし上がって来た男だけに肝は据わっているようで、監禁されても涼しい顔で静かにこちらを睨み付けてきます。

「お前……ゲドーだな」

名ばかりとはいえ探偵、噂くらいは聞いていたようですね。

「今更気付いたところでもう遅いよ。さあて、どうしてくれましょうかね、珍念和尚」
「元凶は瀬奈や言うても、この男にもいろいろ痛い目に遭わされましたしなあ。バチが下ってもしゃあないでしょうなあ」
「ちっ、生臭坊主め」

二崎はサングラス越しに和尚を睨み、唯一動く頭を後ろの壁に叩きつけました。古い納屋は天井から揺れ、立てかけてあったトンボやクワが倒れてきます。

「うわっ、凶暴な奴だなあ。じゃ、とっととバチを下すとしますかね」
「ああ、待っとくんなはれ。その前に、聞き出さんとあかんことが」
「と、言いますと?」
「瀬奈の会社の、悪事の証拠ですわ。この後あの瀬奈をブチのめすにしたかて、奴の悪事を明るみに出さんことには解決にならへんのとちゃいますか」

ふむ、確かに、瀬奈にはシュン・ホールディングスという巨大なバックがついています。瀬奈に何かあったことを知った会社が妙なことを起こすと困るので、グループごと潰れてしまった方がいいでしょう。社員には悪いですが、潰れるような悪事を重ねていればそれも自業自得。

「さすがですね和尚。なら、拷問といきますか。ふふ、拷問って響きがまたたまりませんなあ」
「おやおや、お主も悪よのぉ」
「いえいえ、和尚様ほどでは」

なんか楽しくなってきました。そんな我々を、当の二崎は呆れたように見下してます。

「……いっておくが、俺はプロだ。口は割らない」

かぁーっ、格好つけちゃって。そもそも長身の引き締まった体に黒スーツ、白髪のサングラス姿がやたら似合っちゃって気に食いません。こんな時まで涼しい顔しちゃって。
と、今更のように当然の疑問が沸いてきます。

「……暑くない?」

まだ6月とはいえ今日は気温も高いですし、梅雨も盛りで小屋は蒸し蒸ししています。上着を脱いで半袖の私さえ暑くてたまらないのに、スーツなんか着こんでよくも平気でいられるものです。まじまじと顔を覗き込んで尋ねると、

「別に」

二崎は顔を背けてそっけなく答えました。試しに二崎の胸元に手をあててみます。

「……あったかい」

ボタンの間からも、もわっとした熱気が伝わってきます。

「離せ、気色の悪い」

二崎は顔色ひとつ変えませんが、口調がややきつくなっています。

「……涼しい顔して、やせ我慢してるだけなんじゃないの?」

二崎の顔がピクッと揺れたのを見て、和尚が指を差して笑います。

「おほほほほ。その歳で『別に、俺は暑くないから』なんて無意味にカッコつけとるんかいな。どんだけ厨二病やねん。やーい、大人げないでやんの」

まあ、大人げないのは私らも同じでしょうが。でもこうなったら徹底的にからかってやりたくなるのが人情というもの。

「よーし、和尚さん、さっき取り上げたナイフで服破っちゃいましょう」
「ほいきた、任せなはれ」
「……やめろ!」

ドスを利かせた声も、今となっては怖くもなんともありません。切込みを入れてスーツとワイシャツをはぎとると、

「うわっ」

炊飯器を空けた時のような熱気がむわっと広がり、酸っぱい臭いが立ち込めます。

「くさっ! 汗臭っ!」
「やっぱり汗だくやないかい! ワイシャツもグチョグチョやで」

和尚が薄茶色に変色したワイシャツを絞ると、ボタボタと汗が漏れ出し水溜りをつくりました。二崎はさすがに少し顔を赤らめ、口を堅く結んで斜め下を向いています。まだ黒いランニングシャツが残っていますが、それもすっかり濡れそぼって肌に張り付いています。

「涼しい顔して服の下は汗まみれって逆にダサいよ君。脱ぐ時とか気持ち悪いでしょ」

押し黙ったまま答えようとしません。しかしずいぶん鍛え上げられた体ですね。無駄な脂肪は全くないので引き締まっており、服を着ているとスマートに見えます。いわゆる細マッチョという奴でしょうか。こりゃ殴り合いになってたら殺されていたかもしれませんね。小麦色に焼けた肌が汗で照り輝き肉体美を強調し、何とも見事……と観察していると、

「センセ、見てくださいなコレ」

和尚が二崎の脇を指さして言いました。覗き込もうとするとドギツイ脇臭で鼻がもげそうになります。堪えて見てみると、そこには真っ白な腋毛が生茂り、汗に濡れてワカメのように広がっています。

「腋毛まで白いとなると、髪も染めてるわけじゃないんでしょうね」
「アルビノやろか」
「それにしては随分頑丈な肉体ですよね。というか腋毛ボーボーだねキミ。グロいから手入れした方がいいよ」
「くだらん」

それだけ言って、二崎はまた黙ってしまいます。うーん、カッコいいのか悪いのか。悪臭を放つ白い腋毛の森を見つめていると、なんとなく素朴な疑問が沸いてきました。

「鼻毛も白いのかな」
「……放せっ」

顔に触れようとすると流石に派手に頭を振って抵抗されましたが、手足が動かないのではあまり意味もありません。和尚に頭を抑えてもらって、私は懐からペンライトを取り出しました。

「それじゃ、失礼して」
「や、やめろっ」

サングラスの奥から細い吊り目で睨み付けてくる二崎。そんな二崎の鼻の頭を、人差し指でぐいと持ち上げます。整った顔が豚のように醜く歪み、射殺すような目付きとの対比が何とも滑稽です。さっそく携帯を取り出して、二崎のブタ面を写真に収めていきます。どうでもいいですが痴態コレクションは私のささやかな趣味で、フォルダには今までとっちめてきた男たちの醜態が数百枚は詰まっています。
携帯をしまい、広がった鼻の穴をライトで照らし出してみると

「わあ、すごいすごい。やっぱり真っ白ですよ和尚。しかも腋毛同様、全く手入れしてないみたいでジャングル状態」

押さえつけただけで両穴から何本も鼻毛が飛び出していたのですが、ピンセットで何本か引き抜いてみることにしました。プチっとな。

「ぐっ」

ピンセットの先には長短さまざまな白い鼻毛が4、5本ひっかかっていました。一回でこの量とは、この穴の中はどんだけ密林なんですか。

「うわー、鼻くそまでついてるよ。ほれ、見てみなよ。黄緑でネバネバしてるこれ」

間近にブタ面の二崎を覗き込んでピンセットを突き出すと、
ベチャッ
っと、私の額に生ぬるい液体がかかりました。二崎が唾を吐きつけたのです。

「あっ、この、アホンダラ!」

すかさず和尚がげんこつをお見舞いすると、はずみで二崎のサングラスが外れて地に落ちました。私はハンカチで額の唾をぬぐい、鼻毛と鼻くそを採取ケースにしまってから

「この期に及んで、随分と反抗的じゃない」

と笑ってみせました。すると二崎は無表情のまま私の目をじっと見て

「こんなことで俺が折れるとでも?」

平然と言ってのけます。露わになった細く涼やかな目。その瞳は、深海のように深いブルーでした。私はああ、と手を打って、

「キミ、ハーフだったのかい」

そう聞いてみたのですが、相変わらず反応はありません。うーん、確かにこのままじゃ埒があきませんね。和尚も二崎の頭を放して、溜息まじりに私の側へ戻ってきます。

「あきまへんな、薬でも持ってきましょか」
「無駄だな。自白剤の耐性はつけてある」

嘘か本当か知りませんが、二崎が随分自信たっぷりに言います。

「必要ありませんよ。方法はいくらでもありますし。とりあえずは自尊心を剥ぐことです。残ってるランニングシャツと下半身も全て剥いちゃいましょう」
「っ……! やめろっ……」

? 気のせいか今までになく嫌がったような。まあいいか。
とりあえず汗でグッショグショになったシャツを脱がせ、屈辱を煽るために裸の上からネクタイだけ結び直しました。

「裸ネクタイ! しかも黒ネクタイとか」

和尚が囃し立てますが、二崎はびくともしません。が、下半身に手をやると

「やめろ」

とまた吠えてきました。無視してスラッグスを切り裂くと、やはり黒でキメたボクサーパンツが現れました。下も相当蒸れているようで、既に熱気と臭気が漂ってきます。

「うわー、パンツも汗でずぶ濡れじゃない。チンコの周りが漏らしたみたいに黒ずんでるよ」
「……離せ。俺に触れるな」

やはり何かおかしいですね。そりゃだれだってチンコを見られるのは嫌だろうけど、既に鼻毛まで観察されてるのに。パンツに手をかけてためらっていると

「男の性器なんて見て楽しいかよ、変態」

二崎が吐き捨てるように言ってきます。

「楽しいよ」
「男色も、たしなむ程度には」

二崎は返す言葉も思いつかないのか、ついに黙ってしまいました。

「ハーフってことは、やっぱ相当でかいんでしょうな。外人さんのは馬並みやさかい」
「そりゃ偏見ですよ。でもまあ、これだけ立派な身体してるんだから、バランス的に考えてもそれくらいはありそうですよね」

パンツの下から漂う抑えがたい悪臭を堪えながら、私たちはかがみこんで二崎の股間に注目しました。

「ではいきますよ。3、2、1、ご開帳―っ!」

プルン、と跳ね上がったそれを見るや、私と和尚は間髪入れずに叫んでいました。

「「ポークビッツやないかいっ!!」」

スリムながら鍛え上げられた肉体。その中心に表れた男のシンボルは、小学生並みの短小包茎でした。等身大のガンダムが縁日の水鉄砲持ってるくらい不釣り合いです。

「なんやこりゃああ! ポークビッツなんていうたら伊○ハムに失礼なくらいのミニサイズやないかい!」
「うわっ! 君チンコくっさいな~」

ドリルのように縮こまったペニスは剥いたら相当臭いんでしょうが、剥かなくても蒸れていたせいでかなりの悪臭を放っています。

「……男がチンコ見て嬉しいかよ」
「嬉しいわけないだろボケェ!」
「このくそたわけがぁ!こんなもんチンコと呼べるかい!」
「ぐほおぉっ!」

もはや負け惜しみにしか聞こえない言葉に腹を立て、和尚がそのポークビッツを蹴り上げました。さすがに痛いのか、二崎は舌を突き出して涎をまき散らします。

「高校生ならまだ『かわいらしいおチンポ』で許されるかもしれませんが、その歳でこれは完全アウトですよ」
「毛ばかり成長しおってからに。チンコが白髪に埋もれてしもうとるやないかい」
「ぐぅ……。好き勝手いいやがって」

二崎の目が少し潤んできています。これだけのコンプレックス持ってたなら、股間晒しの効果は抜群だったようですね。裸ネクタイで短小包茎を晒す二崎を、二崎自身の携帯で撮影します。

「さーて、じゃあそろそろ話してもらおうかな。いいかい、質問に答えなきゃこのポークビッツ、君の携帯から『全員に送信』するからね」
「くっ……卑怯な」
「嫌ならいいけど」
「……俺はプロだ。依頼人がどんなクズだろうと、守秘義務は守り通す。俺の恥など、二の次だ」
「へえ、ご立派。じゃ、ポチッとな」
「あっ」

躊躇なく、私は「俺のビッグマグナム、見てくれ」という内容の画像つきメールを一斉送信しました。ただし、瀬奈にだけは送りません。あいつにはもっとインパクトのある贈り物を考えていますからね。数分も立たずに次々とメールの着信音が鳴り出し、その間二崎は歯をくいしばって震えていました。

「……ふん、馬鹿め。これでカードはなくなったわけだ。さっさと俺を解放しろ」

しばらくして、二崎が吹っ切れたように挑発してきました。ふん、一匹狼の壊し屋に仲のいい友達がわんさかいるとは思いません。入ってたアドレスのほとんどが、生涯で数回会う程度の依頼人だってこともわかっていますよ。まあ、それでも裏社会でいろんな噂が飛び交うでしょうが。

「そうですね。遊びは終わりです」
「……覚悟しておけよ。この借りは必ず返す」

無表情のままですが、二崎の声には勝ち誇ったような響きがあります。でも残念。

「じゃ、とっとと話してもらおうかな。ほーら、チンポが痒いだろう。まともなチンポ持ってないくせにおチンポ様を侮辱して、祟りが下ったんじゃないかな。触りたくてたまらないんじゃないかな」
「……ひがぁっ!? し、しまった、催眠かっ」
「違うよ祟りだよ。痒くてたまらない上に射精したくてたまらないだろ。触ってもないのに絶頂間近の快感、イきたいのにイけない感じ」
「…………うがあああああっ!??」

終わりましたね。今や二崎は耐えがたい快感と苦痛を一気に味わっているはず。細い目がぎょっとするほど見開かれ、ダラダラと涎を垂れ流しています。

「答えないと更に酷いよ。快感で頭吹き飛んじゃうかもね。テープレコーダーに録音するから、瀬奈の悪事を全てぶちまけて下さい。それから、おチンポ様に許しを請うのです」
「だ……誰が、うぎゃああっ! か、かゆいっ! でも気持ちいいっ! なんだこれはあっ!?」
「ふん。ま、徐々にほぐしていきますか。いいかい。私の質問を無視したり、嘘をついたりすると、この状態でさらにチンコに電撃が走るからね。返事は?」
「わっ……、わかった!」

よしよし、根掘り葉掘り聞きだしてやりましょう。

「お名前と年齢をどうぞ」
「ふ、二崎アンドレイ侑李(ふたざき・アンドレイ・ゆうり)。25歳……」
「ご職業は」
「興信事務所所長……実態は、雇われの恐喝屋、潰し屋だ」
「好きな食べ物は」
「は、ハンバーグ」

和尚と私は思わず吹き出しました。

「あの面でハンバーグて」
「わ、笑っちゃいけませんよ。好みの問題ですから」
「な、なあもういいだろ。解放してくれ」

馬鹿じゃないですかね。あんたの好物聞くためにここまでしてるわけないでしょ。

「続けますよ。あなたは童貞ですか?」
「……ちがう。……あぎゃああああああああっ!!?」

突然二崎が白目を剥いて痙攣しました。ばーか、どうでもいいところで嘘ついたな。私の逆治療は要は本人の思い込みで痛みを感じさせるもの。二崎は自分が嘘をついてることがわかっているので、暗示にかかって電流のような痛みを感じたんでしょう。

「かわいそうに。そのルックスで25にもなって童貞とは」
「まあ、あのポークビッツなら仕方あらへんわな」
「よーし、続けますよ。ちょっと気になってたんですが、なんで黒いネクタイなんかしてるの?葬儀じゃあるまいに」
「はあ、はあ、潰した相手への、せめてもの追悼にと」

またもや私たちは腹を抱えて笑います。

「あかんわ、こいつホンマもんの厨二病患者やで」
「そういや靴底に金属なんて仕込むヤクザ、今時いませんもんねえ、うぷぷ。そうかそうか、それであんな厚着してたんだね。無意味にカッコつけたいから」
「そ、それもあるが」

お、他に何があるって言うのでしょう。

「あ、汗かいて、臭いがこもるのが、好きなんだ。ホテル帰って、脇とかパンツ嗅いで自慰するつもりだった」

これには笑いを通り越してあきれ返ってしまいます。

「変態はお前やないかいっ!!」
「はあ、仕方ないですね。じゃあほら、嗅がせてあげますよ」

私はちぎり捨ててあった汗だくパンツを拾い、二崎の鼻に押し付けました。

「んがあああっ!! もうイきそうなのにこんなの嗅いだらっ!! んひぃいい! フゴッ!
ああ、俺の臭いが! 雄の臭いがっ! もうダメだ! 頼む、出させてくれぇ!」

フゴフゴと鼻を鳴らし、舌を伸ばして自分のパンツを舐めしゃぶる二崎。細く鋭い目は完全に白目を剥き、荒い鼻息で鼻水が押し出されて来ます。

「ありゃもう、完全に薄汚い雄豚やな。ポークビッツやし」
「まったくですね。じゃ、ささやかなプレゼントだ」

私は鞄から鼻フックを取り出し、孤高の壊し屋の鼻にひっかけました。先ほど以上に鼻の穴が広がり、引っ張られて口も開き、歯茎がむき出しになります。

「ブゴオオオッ!! ブヒイイイィィィッ!!」

どうやらMっ気もあったようで、ブタ面になると同時にポークビッツがプルプルと激しく震えました。広がった穴から鼻水が垂れ流れ、涙や涎と混じり合って裸体に流れていきます。正統派イケメンの瀬奈には及ばないとはいえ、この二崎も野性的かつクールな感じでなかなか深みのある端正な顔立ちをしていたのですが、今や見る影もないただのブタです。

「ではブタ崎くん。次の質問です」
「もう! もう無理だ! なんでも喋るから、早く瀬奈のこと聞いてくれえぇ!」

あーあ。散々格好つけといて自分から依頼人売っちゃったよ。ブタ崎は彼が知る限りの瀬奈の悪事、自分が瀬奈に頼まれてやった数々の窃盗や放火の内容、そしてその証拠が自分の事務所の金庫にあることまでペラペラとぶちまけてくれました。その証拠とこのレコーダーの証言があれば、万一法廷に立つことになったとしても有利に働くでしょう。

「も、もうっ! フゴッ! もう許してくれ! 知ってることは全部話した! 本当だ! 信じてくれ!」
「ふん、じゃあ、おチンポ様に許しを請い、洗礼を受けるのです。あ、洗礼はキリスト教だっけ?」
「別にこの際何でもええですやろ」

うん、寛容なご住職でよかった。本尊がないため、この男が壊した石塔たちに誓わせることにして、首輪をつけて四つん這いで境内まで連れて行きました。黒いネクタイ、それに左手の黒皮の手袋以外は何も身に着けていません。小坊主達が何事かと集まる中で、ブタ崎は地面に手をつき、石塔のかけらの上に涙と鼻水をこぼしながら大声で誓いました。

「この哀れな雄豚、ブタ崎侑李は! 豚の身でおチンポ様を足蹴にしたどうしようもない短小包茎クズ野郎です! ブヒッ、こ、これからは身も心も全ておチンポ様に尽くします! ですからどうか!このブタのチンポ以下のポークビッツを思い切りしごかせてくださいいいっ!!」

尻を大きく突き出し、フックで広がった鼻を地面に擦り付けて何度も土下座をしながら、ブタ崎は山じゅうに響き渡るほどの大声で何度も繰り返しました。

和尚の許しを得て、私は射精の許可を与えました。途端、ブタ崎は飛び上がって仰向けになり、腰を突き上げて小さなペニスを掲げると、両手で握り潰さんばかりに揉み扱きました。炎天下の日差しを浴びて、汗がほとばしっています。泥にまみれた顔は鼻水でグチャグチャに汚れ、血走った白目や突き出た舌、ボサボサに乱れた白い髪、醜く広がった鼻の穴と、もはやそれはブタと呼んだらブタが可哀そうなくらいの汚物になり果てていました。
寺中の小坊主たちが見守る中、ついにブタ崎は奇声をあげました。

「ブヒイイイイイイイッ!! イグウウウッ!! 侑李のザーメンシャワー! おチンポ様に捧げましゅううううううううっ!!!」

次の瞬間、ブタ崎の股間から噴水のように大量の精液が吹き上がり、周囲の木々や石塔、そしてブタ崎自身に降りかかっていきました。腰を高く突き出したままビクンビクンと痙攣していたブタ崎でしたが、やがて動きが弱まり動かなくなりました。と、

ジョロロロロロロロ……

気絶したブタ崎のポークビッツから勢いよく尿が噴出しました。見事な円弧を描いて、自分の顔にバチャバチャと直撃していきます。

「お……和尚さま。一体これは」

小坊主の一人が恐る恐る尋ねると、

「なあに、バチがあたっただけや。やっぱり、悪いことはしたらあきまへんなぁ」

和尚は温かい笑顔を浮かべて、優しく小坊主の頭をなでてやりました。

「で、どうしますか、あれ」

この世のものとは思えない壮絶なアへ顔を晒して気絶するブタ崎を指して、私はそろりと尋ねました。

「まあ、ブタ畜生には、畜生道がお似合いやろなぁ」

和尚は小坊主を抱きしめたまま、閻魔のような笑みでブタ崎を見下ろしていました。

 

 

 

「う……ここは……」

サウナのような熱気と肥溜めのような悪臭、それに耳元で響く不快な音で、二崎は目を覚ました。鼻に違和感を抱き、自分の演じた醜態を思い出す。

「あ、あのジジイども」

顔を真っ赤にして鼻フックを外そうとするが、そこで自分が全裸のまま、手首足首を後ろで縛られているのに気付いた。自分のものなのだろうか、顔や体が精液と尿で濡れているようで、そこからも悪臭が立ち上っている。脱出しようとゴロゴロと転がってみるが、暗くて見通しが聞かない。

「どこだここは……? それにこの音は……」

ようやく、それが音ではなく「声」だということに気付く。ブーブーフゴフゴという、低く醜い鳴き声。それも一匹や二匹ではない。

「ブタ……? じゃあ、ここは……」

ようやく目が慣れてきたころには、彼は数匹のブタに取り囲まれていた。荒い鼻息が吹きかかるほどに近い。

「ひいっ」

人前では決して上げない無様な悲鳴を上げてごろごろ転がるが、どこに逃げてもブタ達に取り囲まれてしまう。どうやら全てオスらしく、去勢もされていないらしい。いきり立った肉棒を震わせ、のしのしと近づいてくる。

「や、やめろっ! 俺は男だ! いや、それ以前に、俺は人間だ!! 貴様らブタといっしょにするな!!」

そうは言いながら、二崎は自分の異変に気づいていた。雄豚の臭いと熱気がこもるこの豚小屋の空気、そして自分自身が発する臭いに、彼は少なからず興奮していたのだ。

「ち……違う、おれはブタじゃない、変態でもない、ブタなんかじゃ……」

壁際に追いつめられる。そこへブタの群れが続々と集まってきた。

「や……やめてください! 許してください! 近づかないで!」

涙を流してブタに懇願する二崎。そんな哀れな男に、ブタ達は容赦なく飛びかかる。

「ひいいいいいいいい!! 助けて! 誰か! おチンポ様アァーッ!!」

 

 

 

翌日。

私と和尚は恐る恐る、豚小屋の扉を開きました。昨日ブチ込んだブタ崎君の様子を見るためです。

「生きてますかね」

最大の心配はそれでした。いくら私とて、人殺しは避けたいものです。ブタはよく太った人の代名詞にされますが、あれはほとんどが筋肉で、脂肪はほとんどありません。そういう意味でも二崎はオスブタと近い身体をしているのですが。とにかく、ブタは思われてる以上に危険な動物なのです。無防備な二崎が殺されていても不思議はありません。

「牙は抜いてありますが。ま、仏様のお心次第ですかな」

現れた光景に、私たちは思わず息を飲みました。結論から言うと、二崎はちゃんと生きていました。ですが……。

「ブヒーッ!! ブゴッ! ブヒブヒ! ブーッ!」

小屋の中央で、二崎は鳴いていました。その体の周りには、何頭もの雄豚たち。
ブタ崎の尻の穴には、1頭の豚のペニスがくわえこまれていました。それだけならまだしも、なんと鼻フックで広がった両の鼻孔にも、それぞれ1頭ずつのペニスがぶち込まれていたのです。3匹のブタ達は狭苦しいのに耐えながら、互いに押し合いへし合い二崎を犯しています。そんな潰れてしまいそうな状況を、二崎の強靭な肉体は見事に耐え抜いていました。もっとも、肉体は、ですが。

「ブゴブゴ、ブヒョエーッ」

和尚が豚どもを追い払うと、二崎は奇声をあげてその場に倒れ伏しました。その顔は見るも無残で、一目で正気を失くしているとわかりました。ぽっかりと開いた鼻の穴からは豚の精液がダダ流しになっています。うわ言のようにブタの鳴きまねを続けていますが、それはもはや鳴きまねではないのでしょうね。どうやらあの3匹以外にも代わる代わる犯されたようで、小屋のあちこちに精液や尿が広がっています。

「ちょっとやり過ぎましたね」
「まぁ、鼻については医者にかかれば治るでしょうて。精神の方は、ま、本人次第ですな」

二崎も相当悪行を重ねてきたようですから、自業自得と言えばそれで仕舞いですが。とはいえ、この顔を見る限りでは、まんざらでもなさそうですねぇ。

「ブヒブヒ、ブギョォーッ」

精液や鼻水をまき散らして叫ぶ二崎……いえ、ブタ崎の口元は、今までに見たことがないほど朗らかな笑みを浮かべていたのです。

「でも、いつまでもここに置いとったら死んでまうなぁ。うちで飼う余裕もあらへんし」
「ああ、それなら大丈夫ですよ。飼ってくれそうな人に心当たりがあります。ま、それも短い間だけになってしまいそうですが」

汚臭を発するブタ崎の頭を撫でながら、私はニコリと笑いました。

 

 

 

 

瀬奈春哉は、書斎で仕事を片付けながら、ちっと舌を打った。

(二崎のやつ、一体何をしている)

3日前、珍宝寺で別れてから、何の連絡もよこしてこない。もっともあの男の一匹狼は今に始まったことではなく、音信不通になることも珍しくはない。一週間という期限も半分も過ぎていないのだが。

「こんな仕事、今日中に片をつけてやる」

あの日、自信満々に言っていた二崎の顔を思い出し、瀬奈は苛立ちを募らせる。そもそも瀬奈は、自分に従わない人間が大嫌いだ。あの狸親父はもちろんだが、あくまで自分と対等だという態度を崩さない二崎にも、内心激しい憎悪を抱いていた。

「いつか思い知らせてやるさ」

そう独りごちた時に、部下の一人が大きな段ボールを荷台に乗せて入ってきた。

「CEO当ての宅配便なのですが。この大きさで、中身が『生もの』となっております。何やらガサガサしているようですし、危険物かもしれません。警察を呼びますか」
「送り元は」
「京都の珍宝寺となっていますが」

瞬間、瀬奈の頭にある予感が走った。

「構わないよ、ご苦労。出て行っていいよ」
「しかし」
「出てけって言ってんだよ、ノロマ」

部下を追い払うと、瀬奈は慎重に段ボールを開いていった。やがて現れたのは……

「ブヒー! ブヒブヒ! フゴフゴ!」

思わず後ずさる。全裸のままリボンで縛られ、鼻フックをつけられてブタのように鳴く人間。まぎれもなくそれは、あの二崎侑李だった。突き出した舌をベロベロ振り、目は明後日の方を向いている。鼻フックをつけられているとはいえ、鼻の広がり具合は異常で、両穴合わせると口の面積に匹敵するのではないかという程だ。
その姿はまさにブタそのものであった。首にはなぜかネクタイと、「拾ってください」と書かれた札が下がっている。

「驚いたな。これは一体」

悪臭に鼻を抑える。それから瀬奈は、ブタと化した二崎の尻に書簡が突っ込まれていることに気が付いた。嫌々ながら引き抜き、茶色いモノのこびりついた紙片を慎重に開く。

≪貴方の悪事は、このブタが全て吐いてくれました。証拠もおさえてあります。公表されたくなければ、一週間以内に珍宝寺まで来られたし。
ps 誰かさんのせいでペットを飼う余裕がありません。よければ飼ってやってください。≫

「そういうことか」

すぐに察しがついた。あの日和尚の隣にいた中年男。あれは……。

「実在したとはね、Dr.ゲドー。面白いじゃないか」
「ブーッ、ブヒブヒ、ブゴッ」
「あはは、見事なもんだ。あの孤高の壊し屋が今や薄汚いブタか」

かつて二崎と呼ばれていたブタは、鼻から鳴き声を出している。そのせいで鳴き声に合わせて鼻水が吹き出し、鼻提灯を作った。瀬奈はその姿を写真に収め、嬉々として闇社会用のブログにアップする。

「あの二崎アンドレイも、今や俺のペットになりました。俺に刃向うつもりのある人は、考え直した方がいいよ、っと。ふふ、いいよ、大歓迎だ。こんなペットなら喜んで飼ってあげるよ」

かつて自分を苦しめ、常に自分を見下してきた男が、自分のペット、それもミニブタになっている。こんな快感はない。試しに足を差し出してみると、白髪の美しいブタは舌を出してベロベロと舐めてくる。面白くなって足の親指を鼻に突っ込んでみると、ブタは嬉しそうに鳴いて小さな性器から精液を吹き出した。

「すっかり鼻マンコか、ふふ。かわいいなー、俺に従順な二崎は。まあ飽きたら捨てるけどね」

ブログでは、敵対していた企業や暴力団が次々と恭順を申し出てきていた。それだけ二崎は恐れられていたのだ。

「ゲドーの力が手に入れば、俺はもっとしたいことをできる。何だってできる。会うのが楽しみだよ。あはははははは」

普段は飲まない酒を飲み、皿に入れて二崎にも与えながら、瀬奈は一晩中笑い続けていた。

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