「おい、佐川」
「えっ、な、なにかな」
昼休み、俺が声をかけると、佐川はいつものように小さな体を震わせた。このビクビクした態度には、毎度イライラさせられる。
佐川はクラスに一人はいるような、真面目で大人しく影の薄い、勉強しか能のないような優等生だった。いつも教室の隅っこで本ばかり読んでいて、声をかけると困ったような半笑いを浮かべて怯えた目を向けてくる。そんな「近づかないでください」オーラ全開なせいか、佐川に近づこうとする者はほとんどいない。
ただ、俺だけが特別だった。
「明日の土曜、どうせ暇だろ」
「え、あ、いや、今週は塾の特別講習があって、その、夕方まではちょっと……」
「夜は空いてるんだな」
「あ、ええと、うん。8時以降なら……」
「なら、8時に町外れの公園な」
俺がいやらしい笑顔を浮かべて肩をたたくと、佐川は露骨に嫌そうな顔をした。
「なんだ、嫌だっての?」
「でも、昨日会ったばかりじゃない……。しかも、外でなんて、そんな」
「ふーん、あっそ」
そう言って、俺は佐川の机の上にあったボールペンをひったくった。
「あっ」
「明日返すよ。それまで借りるってことで」
「ちょっと待って、待ってよ三上くん!」
佐川の声を無視して、ペンを振りながら足早に退散する。珍しい佐川の大声にクラス中の視線が集まり、佐川は気まずそうに顔を伏せた。
「おい三上、あいつに何したんだよ」
「あんまり関わらねー方がいいぞ。無視しとけって」
「へいへい、ただ俺はあいつのあーゆー態度が気に食わねえんだよ」
寄って来る友人たちを適当にあしらい、俺はふんぞり返って机の上で足を組んだ。佐川の方に目をやると、案の定暗い顔で頭を抱えていた。体が小刻みに震えている。その姿に俺は期待を募らせた。
明日は、どんな顔を見せてくれるかな。
そう、俺は佐川の秘密を知っている。誰も知らない、裏の顔。それを思い出すだけで、情欲が湧き出てくるのを感じた。
家に帰ると、俺は机の中から封筒を取り出した。昨日佐川と密会した時にデジカメで撮って、即日プリントした写真が入っている。
(明日にはまた楽しめるけど……)
なにせ思春期まっさかりの高校生なのだ。毎日溜まるものは溜まる。今日はこの写真で、一人さびしく抜くとしよう。
「へへ、ひでぇ顔」
写真に写っていたのは、カーテンを閉め切った俺の部屋。その中央にいる全裸の少年。いや、もはやそれは、犬だった。
股を開いた中腰で両手を前方にだらりと下げ、情けない顔でカメラを見上げている。すっかり発情しきって顔は真っ赤に染まり、口を大きく開けて舌をだらしなく垂らしている。
股間にはペニスがそそり立ち、その根元は赤いヒモできつく縛られ、堅そうな男根には血管が浮き出ていた。溢れた先走りが糸を引いて落ち、足元に小さな水溜りを作っている。
「くくく、こんな姿、クラスの奴が知ったらどう思うかな」
俺はズボンとパンツをずり下げ、写真を見ながらオナニーを始めた。残念ながら動画は撮れなかったので、昨日のやりとりを思い出す。
素っ裸になった犬は、アナルに犬の尻尾型バイブまで突っ込み、この服従のポーズを撮らされた。それだけで既にこの通り、先走りを垂らして発情していたのだ。
二枚目の写真を取り出す。犬は首にリードをつけて、四つ足で踏み出している。リードはベッドの脚にくくりつけられているが、かなり短い。犬は無様にもその短いリードを自ら引っ張るように駆け回った。自らの首を絞めながらぐるぐるともがき歩いては、やがて仰向けに転がって手足をじたばたさせる。その度に嘲笑を含んだ罵声とオモチャの鞭が飛び、打たれた犬はそれにすら快感を覚えていた。
「なんだかんだいって、佐川の奴もスイッチ入るとノリノリだしな」
俺は苦笑しながら、三枚目の写真をめくった。汚いアへ顔のアップである。窒息に苦しみ、ムチで打たれながら、その醜いマゾヒストは見るに堪えない笑顔を浮かべている。
大きく見開いた目は焦点を失い血走っており、真っ赤な舌を上に突き上げ、飛び散った涎がカメラにまでかかって汚れができている。鼻からは鼻水が垂れ流れ、眉根や口元はじめ顔中にしわを寄せているため、別人でないかと疑う程、顔全体が醜く歪んでしまっている。
俺はこの醜い顔も大好きなので、写真をオカズにせんずりをこく右手にも力が入る。
フィニッシュのため取り出したのは、放尿中の写真である。
お約束と言うべきか、犬はベッドの上で片足を大きく上げて、前に置いたバケツ目がけて盛大に放尿しているのだ。まさに人間の尊厳などない姿だが、顔はすっかり蕩けきっていて見る影もない。放物線を描いている尿はバケツの淵にあたり、部屋中に飛び散っている。
しかしよく撮れているものだ。戒めを解かれたばかりで真っ赤に腫れ上がったペニスも、そこから放たれる黄色い稜線も、切り取ったように克明に写っている。
「へへっ、なんて無様な姿なんだ。救いようのないド変態だぜっ…! うっ、うおっ、おっ、おおおおお~ッ!!」
家に誰もいないのをいいことに、奇声を上げて俺は達した。吹き出した精液が手にした写真を直撃し、犬の痴態をさらに汚す。
「あひっ、ひっ」
あまりの快感に悶えながら、昨日の光景を思い出す。
バケツから漏れた尿はあちこちに飛び散り、部屋は地獄絵図と化した。殺意を帯びた怒声とともに蹴り上げられ、犬は情けない口上を並べ立てて、尿の上で土下座した。
さらには頭を踏まれて自らの尿を舐めながら、ちゃっかり自分でペニスをこすって射精までしていたのだ。もちろんその時の写真もあるが、それは後日使おう。
「ふう~っ。まったく、人間として最低だよな……。しかし、まさか佐川と俺がこんなことして喜んでるなんて、クラスの奴は思わねえだろうな」
写真でペニスを拭きながら、俺は得も言われぬ満足感に浸った。真面目で大人しい佐川の、想像もつかないような素顔を、俺は知っている。そして俺たちの被虐願望、嗜虐願望は見事に一致し、二人だけで何度も気の狂ったSMごっこを繰り広げては狂喜乱舞しているのだ。
「そうさ、佐川だって喜んでいる。立派な変態だ」
本人はまだ自覚しきってないかもしれないが、あんな顔を見ている俺にははっきりとわかる。迷惑そうにしていても、心の底ではあいつもこの宴を楽しんでるんだ。
目立たない優等生と、友人に囲まれたスポーツ馬鹿。そんな俺たちがこんな関係で繋がっているなんて、誰が想像できるだろう。俺たちだけの、共有の秘密。その秘密の共有が、さらに俺を興奮させるのだ。
「佐川のやつ、明日はどんな顔をするのかな。それに、マゾ豚野郎が今度はどんな痴態を晒して悦がり狂うのか……。へへ、明日の夜が楽しみだぜ」
オナニーの始末を終えると、俺はカメラや道具の用意に取りかかった。
翌日。
夕方まで悶々としながら過ごした俺は、午後8時前には約束した公園で佐川を待っていた。この季節、この時間には辺りはすっかり真っ暗だ。昼間でもほとんど人の寄りつかない、寂れた広い公園。奥の林付近なら、木々に紛れて人目につくこともないだろう。ここで思う存分、野外プレイと洒落こもうってわけだ。……我ながら、変態に磨きがかかってきたな。それもこれも佐川のせいだ。
ただ、2月の夜は流石に冷える。ジャンパーを着込んでいても背を丸めてしまう程だから、全裸は相当厳しいだろう。
「まぁ、大丈夫だろう。とんでもないド変態野郎だし」
呟きながら道具の入った鞄をポンポンと叩き、早くも期待で股間が熱を帯びてきた時だった。前方から静かな足音が聞こえ、小さな影がゆっくりと近づいて来た。
いつからだろう。根暗でガリ勉なコイツと会うのが、こんなに楽しみになったのは。いや、2か月前のあの時以来、ずっと……。
「……お待たせ」
遠くで明滅する壊れた街灯の灯りが、頼りなく相手の顔を照らした。紛れもない、佐川だ。教室で見せるような媚びた笑みは浮かべず、周りの空気同様冷え切った無表情だ。
「遅かったじゃないか。5分遅刻。風邪ひかせるつもりかよ」
「それはこっちのセリフだよ。今日は塾帰りでクタクタなのに。それも、外でなんて」
「まぁいいじゃねぇか。そろそろ次のステップに進まないとな」
「はぁ。付き合ってらんないよ」
佐川が大げさに肩をすくめ、溜息を吐いた。やはり秀才には、こういう姿が似合う。
「それで、ちゃんと僕のペンは持ってきてくれたの?」
「ああ、バッチリだ。ここにな」
「はぁ。そんなことだろうと思ったけど。三上くん。ホントにキミってさぁ……」
佐川の言葉を受けながら、俺は寒空の中、スポーツウェアのズボンを下ろした。後ろを向いて、尻を突きだす。相当深く差し込んでは来たが、トランクスの背面中心が不自然に盛り上がっていることが、佐川にもはっきりわかるだろう。案の定、佐川の氷の刃のような鋭い言葉が突き刺さってきた。
「キミって本当に、どうしようもないマゾ豚野郎だね」
その言葉だけで俺のペニスが刺激され、トランクスは後ろだけでなく前まで盛り上がってきた。冬の野外でパンツ一丁、それも前後をもっこり膨らませた姿を、クラスメイトに見られている。クラスで人気者ぶってる俺の、滑稽な姿。最高に無様な俺。それを、佐川が蔑んだ目で見ている。
「ああ、たまらない……。さ、佐川。は、はやく……」
「なに?聞こえない」
「ご、ご主人様! はやく、このド変態マゾ野郎を、思いっきり苛めてくださいっ!」
カメラや道具の入ったバックをベンチに置いて、俺は……、無様な駄犬は、主人の足もとに跪いた。
きっかけは偶然だった。
いや、半分偶然、と言った方がいいのかもしれない。
もともとマゾの気があった俺は、セルフタイマーで自分の全裸や間抜けなポーズ、滑稽な変顔などを撮影しては、それをオカズに自慰をするという変態行為を続けていた。
やがてそれでは飽き足らなくなって、二か月前のあの日、スリルを求めて行動をエスカレートさせた。
学校のトイレの個室で、鍵もかけずに自慰をしたのだ。それもただの自慰ではない。首輪をはめ、尻にバイブを突っ込んでそれを動かし、さらには和式便器の淵を舐めながら、トイレの床に股間を擦り付けていたのである。
物音に気付かなかったのか、それとも気付いたからこそ不審に思ったのか、それはわからない。とにかく、佐川が扉を開けた。それが、俺たちの運命を変えたのだ。
それまでの俺は単純に佐川が気に食わず、事あるごとに因縁をつけて悪口を浴びせていた。佐川は常に媚びた笑顔でごまかしていたが、相当腹に据えかねていたのだろう。
俺の変態オナニーに鉢合わせた佐川は、言葉を浴びせるより先に、迷わず俺の頭を踏みつけ、便器の汚水に沈めた。俺がもがいている間に、佐川は手際よく清掃中の札をかけて人払いをしたようで、個室に戻って来るなり酷い罵声と蹴りを浴びせた。
そんな仕打ちに、俺はますます興奮してしまったのだ。ストレス解消のはけ口とばかり、佐川は俺をなじり、蹴り、写真を撮ってそれを見せつけた。それでも俺が興奮していると知るや、佐川は憑かれたように俺を転がし、慣れない動きで俺を犯した。
事が済んだ後は、男を犯したことで自己嫌悪に陥っていたらしく、慌てながら俺に謝罪してきた。有名大学に推薦で入るために、問題を起こすわけにはいかない。どうか黙っていてほしいと。
俺が出した条件は、定期的に俺を苛めることだった。こうして、真正マゾヒストの俺は、真正サディストの佐川という名パートナーを手に入れたのだ。
「困るんだよね。もうすぐ受験生だしさ、こんなことしてる暇もなければ、誰かに見られたらどうするかって、気が気じゃないよ」
「い、いいじゃんか、見られて恥ずかしいのは俺の方だし」
「ホントに馬鹿だねキミ。恥ずかしいとかいう問題じゃないの」
「そ、それに、お前だって、ストレス解消になるだろ。ほらほら、ガリ勉の疲れを、俺で癒せよ」
俺が下半身裸で四つん這いになると、佐川は溜息をつきながら背後にまわり、尻に入ったペンを思い切り踏みつけた。
「ぎゃんっ!」
「きったないなー。もうそのペン使えないからあげるよ。今度弁償してよね」
「わ、わかった」
「ん?」
「わかりましたご主人様! 千円でも五千円でも貰ってくださいっ!」
「そんなみみっちいカツアゲみたいなことしないよ。それよりさ、なんで上着着てるの?」
「だ、だって、寒いし……」
「脱げ」
「で、でも……」
「はぁ。自分からこんなとこに呼び出しといて、そりゃないでしょ。いいからとっとと全部脱げよ。そんで凍えて死ねば?」
「は、はいっ!す、すぐ脱ぎますっ」
慌ててジャンパーやセーターを脱ぎながら、佐川の股間を確認する。
(やっぱり、盛り上がってるじゃん。変態)
心の中でほくそ笑むと、金玉を蹴り上げられた。白目を剥いて悶絶する俺を、佐川がデジカメで撮影する。
「やれやれ、カメラマンまで兼務なんて。後で写真使ってオナってるんでしょ? 自分の痴態でオナるって、完全にどうかしちゃってるよね」
「ひぎぃ……そ、そうですっ。俺、救いようのないマゾだから……。で、できれば動画も」
「そこまで付き合いきれないって言ってるでしょ。それで? 今日は何持ってきたんだい?」
俺が脱ぎかけの服を脱ぎ捨てている間に、佐川はバッグの中を物色していた。
「バイブにローター、鞭にギャグ……なんだつまらないな。いつもと同じものばかりじゃないか。あ、でもこれなんかは後で使えそうだけど……」
暗がりで見えづらいからか、佐川のチェックはいつもより長くかかった。真冬の戸外で全裸になった俺は、すぐに寒さに耐えくれなくなり、両手で体を抱き込むようにして蹲った。
「さ、さがわぁ…… は、はやく……」
「んー? ちょっと待って。わざわざ野外に来てるんだから、何か変わったことを……」
「……ごしゅじんさまぁー」
駄目だ。嫌々言っときながら変な所で懲り性なのが困る。これだから真面目な奴は……。
風が吹くたびに体が芯の底から冷えかえる。歯がガチガチと鳴りだし、全身が激しく震える。やっぱりこの時期にこんなこと言うんじゃなかった。
「くしゅん」
耐え切れずにくしゃみをすると、佐川が俺の方を振り返った。
「寒いの?」
「ずずっ……うん」
「そんなに?」
「あ、当たり前だろ! 頭いいんだからそれくらいわかれよ……へくしっ」
「へぇー。そっか、そりゃ寒いよね」
佐川の目が怪しく光った。これは、何か企んでる。ヤバいと思うと同時に、寒さで縮こまってたペニスがピクリと反応した。
「道具は後回し。せっかくここまで来たんだしね」
佐川が立ちあがってニッコリ微笑んだ。人を見下しきったあの笑顔。こんな顔、俺以外の誰も知らないだろう。俺は思わずつられて立ちあがっていた。
「ちょっと付いてきて」
「いや、でも」
「人のいるとこには行かないよ。すぐ側だから」
あれだけ渋っていたくせに、もう声が弾んでいる。自分では気づいていないのだろうな。跳ねるように去っていく佐川の後を、苦笑しながら付いて行く。勿論、全裸のままでだ。
「よし、じゃあまずは軽く記念撮影してと」
少し開けたところに出ると、佐川がカメラを構えてそう言った。人の気配はないが、暗くて様子がよくわからない。とりあえず、言われるままに全裸で股を開き、両手でピースを作った。
「はい、チーズ。お、よく撮れてるね。さすがバイトしてまで買ったっていうだけはあるや。暗いところでもバッチリ」
「な、なぁ佐川、何する気なんだ?」
「ん? ああ、そうだね。始めようか。ちょっとこっち来て」
佐川が笑顔で手招きする。佐川がプレイ中に「ご主人様」と呼ばなくても怒らないのは、機嫌がいい証拠だ。真正ドSなだけに、それが逆に怖い。
数歩進んで、思わず立ち止まった。妙に視界が開けていると思ったら……。
「もしかして、池?」
「そだよ、池」
「な、なぁ、もしやとは思うけど」
「飛び込め、っていうつもりだよ」
鼻をすすりながら聞く俺に、佐川はあっさりと笑顔で答えた。本能が命の危機を訴えるが、俺の股間は硬度を増していく。
「さ、さすがにそれはないよな? だって、この寒さだぜ? 最悪死んじゃうかも……」
「最初に言ったでしょ。凍えて死ねって」
「ま、待って……」
「いいから行って来いって」
ゆっくり後ろに周った佐川が、俺を蹴り飛ばした。よろよろとバランスを崩しながら、倒れるように池にダイブする。
「!!!?」
あまりの冷たさに、心臓が凍り付くかと思った。目の前が真っ白になり、全身が刺されたように痛む。水中でジタバタあがいてようやく水面に顔を出しても、視界がぼやけ耳鳴りがする。水を飲むたびに、臓器が悲鳴をあげて軋む。顔が痛くて上げていられない。
運動は得意だが、水泳は遊びでやる程度だ。寒中水泳の経験などない。本当に死を覚悟した時、ロープが投げられた。自分を縛るために俺が持ってきたものだ。必死でしがみつくと、佐川が岸まで引き上げてくれた。
「いたた、手が擦れちゃったよ。なっさけないなぁ、自力で戻って来ることもできないなんて。僕のこと、散々モヤシって馬鹿にしてたくせに」
「ずずず、ずび、ずびばべ……ッずびばべんっ……ぶええっくしょん!!」
陸に上がると、風が体を切り裂いていく。水中以上の寒さに身が震え、しゃがみ込んで体全身を派手に揺すりながらくしゃみをかます。
「へぐじっ!!ぶえっくっしょぉん!!」
すると、視界が不意に明るくなった気がした。数秒後、頬をはたかれて意識を呼び覚まされる。
「ねぇねぇ、見てよこれ」
佐川が俺の隣に座り、眼前にデジカメのモニターを向けていた。
瞬きして目を擦り、ようやく見えてきたのは、くしゃみをしている瞬間の俺の顔だった。白目になり、口を尖らせ、そして鼻の穴からうどんのような鼻水が長く発射されているのだ。
「きったない顔でしょー。三上くん、これキミだよ。ぷっ、実は今も酷い顔なんだけど」
震える腕を持ち上げて掌で鼻の下をこすると、粘ついた鼻水が糸を引いて伸びてきた。寒さのせいで、口もガクガク震えて閉まらない。そんな姿を、さらに正面から撮られる。
言われるままピースを作り、ぎこちない笑顔を浮かべる。笑ったつもりが寒さのせいでうまく笑えてなくて、鼻水まみれの顔をさらに醜くさせた。
「ざ……ざがわ゛……か、体、ふ、ふがせで……」
「タオルなんて持ってきてないよ」
「じ……じぬ……死んじゃう……」
「あはは、すっごい震え方だね。犬みたい。唇真っ青だよ。じゃ、さっさと立って」
「む…む、むり……」
「立てって言ってるんだよ」
「ひぎっ」
佐川に思い切り蹴倒され、俺は泥まみれになりながら必死で立ちあがった。そのまま震える脚で体を支え、頭の後で手を組む。腋毛までさらした格好で、大きく股を開いた。
「はは、いいね。鼻水が胸まで垂れてるよ。……それにほら、見てよ」
写真を撮り終えた佐川が俺の側にやってきて、カメラを見せてくる。
「顔は真っ青なのに、ここはガッチガチ」
「んあ゛っ」
佐川に膝で軽くペニスをつつかれながらカメラを覗き込む。間抜けなポーズを取る俺の中心で、ペニスが真っ直ぐ上を向いていた。
「三上くんのド変態加減には、いつも驚かされるよ」
「お゛、おねがい゛、ふ、服着さぜでっ……」
「もう、仕方ないな。じゃあ温めてあげるよ」
そう言うなり、佐川は俺を蹴倒した。仰向けに倒れた際に頭を打ち、痛みと寒さに悶絶していると、佐川がバッグから何かを取り出して近づいて来た。
暗い上に瞳が重く、それが何かよくわからないでいると、ふと、その物体が明るく光った。
「あんまり声上げないでよ、人が来るから」
意地の悪そうな笑みを浮かべる佐川を照らすそれは、真っ赤な蝋燭だった。気付いた時には、蝋が俺の胸に垂らされていた。
「うぎゃああああああああ!!」
「うるさい」
思わず絶叫する俺の顔を、佐川のスニーカーが踏んづけた。俺は白目を剥きながら、声にならない呻きを上げる。佐川は全く容赦しない。じたばたともがき苦しむ俺の四肢に、まんべんなく蝋を垂らしていく。悲鳴を抑えるため、俺は慌てて口を両手で覆った。
「ん。いい子だよ三上くん。さすがは真正のマゾだ」
足先で頭を撫でてから、佐川がゆっくり足を離した。なおも蝋燭責めは続き、俺はだらしなく涙と鼻水を垂らしながら、必死に口を押えていた。
「ははは、ジタバタ跳ね上がって、まさに陸にあげられた魚だね。心配しなくても写真は撮ってあげてるから、後でゆっくりオナるといいよ」
「ん゛~っ!! んん゛~っ!!」
「火傷の跡残りそうだけど、うまいこと隠してね。じゃ、仕上げはここね」
「……っ!? うぎゃああああ゛あ゛~~っ!!!」
ついにペニスにまで蝋を垂らされ、俺は我慢できずに飛び起きた。
「あ、あづいぃっ!! いだいいいいぃぃぃ!!」
「寒いだの熱いだの、忙しい人だなぁ。熱いならもう一度冷まして来なよ」
「ひっ、い、いやら、やめっ」
言い終わらないうちに、またしても池へと突き飛ばされた。
引き上げられた時には、まさに虫の息だった。声を上げる気力もなく、仰向けに倒れたまま必死に呼吸を繰り返す。空気を吸い込むたび、体の中に激痛が走って気を失いそうになる。
「はは、蝋が固まって鱗みたいになってるよ。汚い人魚だ」
「あ゛……ああ゛……さ、さむ゛……さむい゛……」
「こんな状況でも萎えないなんて、一種の才能だよね」
佐川が俺の股間を足で無造作に踏みしだく。痛みと快感に、少しずつ体温が戻って来るのを感じた。短い付き合いだが、佐川は俺の体の扱い方を、俺以上に知っている。
「あっ……で、でるっ」
「おっと」
寒さのせいか、尿意が込み上げていたのだ。佐川はそれも計算済みだったらしく、俺の言葉に合わせて素早く足を引く。と、上を向いたペニスから小便が発射され、俺の顔や体を濡らして行った。
「あったかくなった?」
「あ゛……き、きもち……」
どぎついアンモニア臭とともに、体中から湯気が立ち上っていく。生ぬるい小便の海に身を浸し、あまりの快感に俺の顔はだらしなく歪んでいただろう。佐川はそんな様子をしきりに撮影している。
生存本能がそうさせるのか、俺は無意識に自分の小便を舐めていた。不快な塩辛さしかなく、乾きが癒えるどころか、不快さが込み上げてくるだけだった。
「あーあー、もう、ホントに馬鹿なんだから。しょうがないなー、ちょっと待ってて」
一人にされるのが怖くて、闇の中に消えていく佐川を捕まえようと手を伸ばしたが、思うように上がらない。だがそんな不安をよそに、佐川はすぐに戻ってきた。
佐川はバケツに汲んだ池の水を俺にかけて尿を流し、背を抱えて上体を起こさせた。それから俺の脱いだ上着で乱暴に俺の体を拭き、自販機で買ってきた温かいお茶を飲ませてくれた。ここで冷たいジュースを差し出してきてもおかしくないような奴だが、冗談抜きで死にかねないと判断したのだろう。
「どうする、今日はもうやめようか?」
依然寒さに震える俺が落ち着くのを待って、佐川がぽつりと聞いた。
「……やだ。俺、まだイッてないし」
「あはは、変態」
佐川が嬉しそうに俺の頭を小突いた。こんな無邪気な姿、俺以外には見せたこともないだろう。俺は、これが見たかったのかもしれない。俺も顔を上げて笑うと、佐川が俺の顔を指して大声で笑い始めた。
「ははは! すごい、鼻水がツララになってるよ」
「え…マジ?」
「ほんとほんと。もー、ギャグ漫画じゃあるまいに」
佐川は相変わらずガチガチ歯を鳴らしたままの俺を撮影し、画面を見せてきた。佐川の言う通り、俺の両の鼻孔からは一本ずつ太いツララがぶら下がっている。髪もところどころ凍って白髪のようになってるし、垂れた涎や鼻水が凍ったのか、身体中、所々白く固まっていた。おまけにペニスをはじめ数か所には、赤い蝋もこびりついたままだ。
あまりの自分の醜態に、放尿で萎えていたペニスが再び膨らみ始める。
「準備完了だね。じゃ、さっきの林に戻って続きしようか」
震える体で立ち上がるのが心もとなくて、歩き出した佐川の後を俺は四つん這いになって追いかけた。
「こんなものを持ってきたってことは、今日は犬じゃなくて豚になりたいってことかな?」
佐川が俺の眼前に吊り下げたのは、俺が鞄に用意していた鼻フックだった。
依然くしゃみと歯ぎしりを繰り返しながら俺が頷くと、佐川は俺の前に屈みこみ、頬に手を当てて正面から見据えてきた。
「たしかに泥まみれで鼻水まみれ。豚そのものだな」
「はっ、はいっ……!」
佐川の顔からは笑顔が消え、冷たい目つきになっていた。どうやらやる気十分のようだ。無意味に一発俺の頬をビンタしてから、佐川は俺の鼻にフックを引っかけた。俺の鼻は遠慮なく引っ張り上げられ、限界まで引き伸ばされる。
「んがぁっ」
「へぇ、想像以上によく似合ってるね。さすがマゾ豚。あ、鼻毛まで凍ってる」
そんな俺の顔を、佐川は至近距離で撮影していった。鼻水のツララは残ったまま、新たな鼻水も垂れ流れている。醜い自分の顔を思い浮かべるだけで、俺のペニスがひくひくと動いた。
佐川はカメラを置くと鞭を取り上げ、容赦なく俺の体を滅多打ちにした。
「ぎゃああ~っ! ひぎぃ!」
「こら、なに豚が人間の言葉使ってんだよ。ちゃんと鳴け」
「ブヒイイイ! ブヒヒィィ!」
みじめに鳴きながら、四つん這いで公園の隅を散策する。通り抜けられる公園でもないし、街灯もほとんどない。こんなところに人は来ないだろうと思いつつも、もし見つかったら、という恐怖は拭い去れなかった。しかし、それすら興奮を増長させる要素になる。
寒さで動かない体を必死で支え、のろのろ動く俺の後ろを、佐川は鞭を振りながらのんびり付いて来る。
「信じらんないよね。あの明るくスポーツ万能で偉そうな三上くんが、こんな豚だったなんて」
「ブヒ、ブヒィィ!」
「ちょうど僕のペンが尻尾になってるね。さすがに腹立たしいけど、この豚にそんなこと言っても仕方ないか。知能も豚並みなんだし」
「ブヒッ!ブヒイイイッ!」
しばらく進んだところで、俺は思わず立ち止まった。寒さで腹が冷え切ったため、便意を催してきたのだ。
「なに勝手に止まってるんだよ」
「ブゴオッ!」
佐川がひときわ大きな風音を立てて鞭を打ち込んだので、俺は痛みに「前足」を折り、尻を上げて蹲る格好になった。その時……。
プッ プウゥーーーッ
間抜けな音を立てて、佐川のペンが吹き飛んだ。ほんのりと、生臭い臭いが漂う。
「臭っ! なに屁なんてこいてるんだよ馬鹿」
「ブギィィ」
頭をげしげしと踏まれるたびに、俺の尻がプスプスと悲鳴をあげる。限界だと察したのか、佐川は鼻フックを引っ張って俺の顔を上げさせた。
「ホントどうしようもない豚だね。いいよ、じゃあここでやれよ」
「ト……トイレ」
「豚の分際でなに馬鹿なこと言ってんだよ」
「ブヒッ」
今夜何度目かもわからないビンタが飛ぶ。俺は諦めて四つん這いになり、尻を突きだした。屈んでするより、四つん這いのまました方が豚らしいと思ったからだ。佐川は満足したようで、カメラを構えてその瞬間を待っている。
数回、大きな屁をこいた。その度に鞭が飛んでくる。鼻フックで歪んだ顔をさらに歪めて一分も踏ん張ると、ようやく糞が出てくる感触があった。
「うわっ、グロい。まさか他人のウンコまで見る日が来るなんてね。わわ、長ーい。尻尾みたいに垂れ下がってる。あはは、チンコと金玉とウンコが、風に吹かれてぶらぶら揺れてるよ」
野外で見られながら糞をしてるというだけでたまらないのに、佐川の実況が興奮を倍増させた。馬鹿にされたことも、自分の無様な姿を思い描けたこともその要因だが、あの真面目な佐川が次々に卑語を飛ばしているのがたまらない。本人は無意識なのだろうか。
「なに気持ちよさそうな顔してんだよ。白目剥いて、舌まで垂らして。豚鼻でそんな顔されたら、人間とは思えないよ。こりゃ本当に豚と見分けつかないね。あ、ウンコが千切れた」
足元にボトリと長い糞が落ちた。まだ尻からは糞が出続けていて、必死でふんばっていると何度もフラッシュが焚かれる。
「うわっ、モリモリ出てくるね。おええ、ウンコが山になってら。しかもなんだいこの臭い。何食ったらそんなに臭いウンコが作れるわけ?いい加減吐き気してきたよ」
気づくとフラッシュの嵐がやんでいた。不審に思って見上げると、佐川は社会の窓から自分のペニスを引っ張り出し、ゆっくり扱き始めていた。
「あっ、なに見てんだよ糞豚。さっさと汚いウンコひり出せよ」
「ブッ、ブヒッ」
脱糞しながら、俺は佐川から目をそらせないでいた。全裸で野糞している奴に言えた義理でもないが、あの佐川が外で自慰をしているのである。俺の興奮は、隠しきれるものではなかった。
「この豚、物欲しそうな顔しちゃって。そんなに僕のチンポが欲しいかい?」
「ブッ、ブヒッ!ブヒブヒ!」
「……馬鹿。そういうことは、ちゃんと言えよ」
「ほ、ほしいっ! 佐川のチンポ、しゃぶりたいです!」
「はは、尻に入れてください、じゃなくて良かったよ」
佐川は俺の頭を両手で掴むと、口内にその大振りなペニスを突き入れた。期待した通り、容赦なく喉の奥まで突いてくる。
「ぼご……ぼべべ……」
俺は白目を剥いて意識を飛ばしながら、尻からとめどなく糞を垂れ流していた。
「はは、汚い汚い。ブタ面でうんこしながらチンポしゃぶる男なんて、日本中探してもキミくらいのもんだよ」
「んぼっ、ぶぶぅっ」
「うっ、この、必死過ぎなんだよ。そんなに口とがらせて」
激しくペニスを突き入れながら、佐川は俺の髪を引っ張ってめちゃくちゃに振り回した。
尻が揺れるので糞が飛び散り、俺の足にも引っかかるが、気にする余裕もない。痛みと寒さ、そして快楽に、俺の視界は真っ白になっていった。
「んあっ、よ、よし、じゃあ出すよ。せっかくだから、こっちにあげるよ」
「んぼっ!?」
ちょうど糞を出し切ったころ、突然、佐川が俺の口からペニスを抜き、フックで広がった鼻へと押し付けた。間髪入れず、生臭く生暖かい精液が、鼻の奥へと流れ込んでいく。
「あが、んごごっ、ぶぼおっ」
「……ふう、はは、ひっどい顔だね。目の焦点おかしいし、舌も変な方向に飛び出てるよ。って、聞こえてないか」
ぜんぶ出し切ると、佐川は用済みとばかりに俺を乱暴に引き倒した。粘ついた精液が逆流して口からも溢れ、息ができない。俺は大量にまき散らした自分の糞の横でのたうちながら、無意識に鼻に指を突っ込んで掻き出していた。
「これはすごい画が撮れたな。まさに地獄絵図と言うか。こんな状態でもチンポは暴れ狂って臍たたいてるし。三上くんのマゾはまさに天賦の才だね」
佐川の苦笑交じりの声がかろうじて聞こえた。フラッシュの光で、時折辺りが明るくなる。
「チンコが鼻水まみれになっちゃったんだけど。ちゃんときれいにしてよね」
ひとしきり撮り終えると、佐川は再び俺の髪を引っ張り上げ、口にペニスを入れてきた。息も絶え絶えに、必死で舐めとる。
「悔しいけど、結構気持ち良かったよ。ほら、褒美だ」
「うあっ」
仰向けに蹴倒されたかと思うと、佐川が俺の反り返ったペニスに靴を乗せてきた。期待に思わず口元が緩む。
「派手にいけよ、豚野郎」
ガツンと一発、蹴り込むように強く踏みつけられた。
「あぎゃああああああああ!!!」
絶叫しながら、俺は自分の顔に精液を吹き出した。それはどぴゅどぴゅと間欠泉のように吹き上がり、周囲の地面や俺の糞をも白く染めていく。
「ははは、そんなに嬉しいの? チンコ蹴られてアへ顔晒しちゃって。この変態」
写真を撮りながら佐川が尋ねているようだったが、あまりの快感と疲労に返事もできなかった。痙攣が収まるにつれ、意識が遠のいていく。
「あーあー、ダメだこりゃ。後始末もしないで……、まぁいいか」
なにか言おうと思ったが、あひあひと声にならない呻きが出るだけだった。意識が途切れる直前、佐川が屈みこんで俺の顔を覗き込んでくるのが見えた。
「ちょっと無理させ過ぎたね。ゆっくりお休み」
唇に何かが触れる感触に、目が覚めた。
木にもたれ掛って眠っていたようだ。目の前に佐川の顔があったが、俺が目を開けると、バツが悪そうに立ちあがった。
「おとぎ話じゃあるまいに……」
「……なに?」
「なんでも。それより、いつまで寝てるんだよ。ホントに死んだかと思ったよ」
「ん……ごめん」
佐川が差しだしてきた熱い缶コーヒーを飲みながら、辺りを見回す。遊歩道の真ん中に寝かせとくわけにもいかなかったのだろう。俺は林の中に連れ込まれていて、体もきれいに拭かれ、佐川の上着を着せられていた。
「キミの衣服は雑巾代わりに使っちゃったよ。ズボンだけは残してるから、ノーパンで帰ってね」
「……ああ。面倒かけて悪い」
「全くだよ。さすがに糞便の処理はできないから置きっぱなしだけどね。ニュースにならなきゃいいけど」
佐川が俺の隣に座って苦笑した。佐川の服も泥や汚水で所々汚れている。
「たまたま人が来なかったからいいけど、見つかったら僕ら二人とも補導だよ」
「見つからなかったからいいじゃん。すっげー気持ち良かった」
「はぁ。死にかけてたくせに。……風邪ひかなきゃいいけど」
「大丈夫、馬鹿は風邪ひかない」
「わかってるよ。僕のことに決まってるでしょ」
怒っているかと思ったが、佐川の口調はいつになく穏やかだった。今なら、何を言っても許される気がする。
「お前も結構楽しそうだったよな」
「僕が? まさか。変態に付き合わされるのはもうこりごりだよ」
「嘘つくなって。お前にはやっぱりああいう慈悲の欠片もない顔が似合ってるよ。教室でおどおどしてるお前見てると、気持ち悪くてたまんねーぜ」
「ふん。お仕置きされるためにわざと僕に突っ掛って来るくせに」
あ、バレてたのか。
ふと、風が吹いて、俺と佐川はほぼ同時にくしゃみをした。苦笑いしながら、佐川が立ちあがる。
「これ以上いると本当に風邪ひくね。そろそろ帰ろうか」
「おう。じゃあ次は……」
「気が早い。調子に乗るな」
佐川は俺のバッグを乱暴に投げつけると、カメラを手渡しながら言った。
「これ、自分で現像してオカズにつかってるんでしょ?」
「変態で悪かったな」
「僕の分も印刷しといてね」
「へ?」
「僕が撮ったんだから、貰う権利はあるだろ。その、僕だって男だし、自慰くらいするよ」
恥ずかしそうに言う佐川がおかしくて、思わず吹き出した。それと同時に玉を蹴り上げられる。
「いっ……でぇっ!! ……へっ、なんだよ、俺の痴態でオナるなんて、ホモかよ」
「キミにだけは言われたくないね。だいたいこんな性癖になったのも全部キミのせいなんだからね。罰として、一生かけていたぶってやる」
「へーへー。お手柔らかにお願いしますよ」
「殺す気でなぶってもらいたいくせに」
佐川は俺の頭をこづくと、速足で林の外へ出て行った。
慌ててズボンを履いて、俺はその小さな影を追って駈け出した。
END