敗北者・奥州筆頭

大坂城、本丸。

外は戦乱の真っただ中で、剣戟の音や、馬の嘶き、そして兵たちの掛け声で騒然としているが、ここだけは静かだった。その最上階では、六本の刀を背負った独眼の青年が、2人の男と対峙していた。

「HEY、てめぇら……オレとアイツの真剣勝負に水差すたァ、いい度胸じゃねぇか。覚悟はできてんだろーな?」
「フフ、キミこそ、たった一人でここまで来るなんて、随分な余裕だね」

馬鹿にしたように言った仮面の男に、独眼の青年は刀の一本を向けて冷やかに言った。

「テメェらみてぇんなMonkeyどもなんざ、オレ一人で充分だろ?」
「貴様ッ」

急に怒気を剥きだした仮面の男を、傍らの大男が静かに制す。

「気にするな半兵衛。すぐに跪かせて、謝らせれば良い」
「そうだね、秀吉」

そんな2人を馬鹿にするように息を吐き、独眼竜……伊達政宗は鋭い左目の瞳で2人を同時に睨み付けた。だが口元には余裕の笑みが張り付いている。

「フン、Monkeyにしてはwildさが足りねぇな。ま、どのみち5分後には醜い屍を晒してるだろーがよ」
「貴様のようなゲスに、我が負けるはずなかろう。……参るぞ」
「来いよ。せっかくのpartyだ。派手に楽しめ!」

言うが早いか、独眼竜は目にも留まらぬ速さで六本の刀を同時に抜き、2人めがけて駆け抜けた。

そして…………。

 

 

 

 

城下では片倉小十郎はじめ、政宗の部下たちが豊臣軍と壮絶な戦いを繰り広げていた。とはいえ、政宗のもとで結束した伊達軍は士気で圧倒的に勝り、豊臣の大軍を徐々に圧倒し始めていた。

「副長、もう勝ったも同然ですね!」
「当然だ。今ごろ政宗様が敵の大将首をあげているころだろう」

そう言って「竜の右眼」小十郎が天主を見上げたまさにその時。天主最上層の障子が開き、仮面の男………竹中半兵衛が姿を現した。

「伊達軍の諸君。遠いところからわざわざ来てくれたお礼に、面白いものをご覧に入れよう。ひとまず鞘を納めたまえ」
「……何言ってやがる。……政宗様はどうした?」

依然刀を構えたまま、小十郎がドスをきかせた声で尋ねる。

「フフフ………慌てない慌てない。すぐに見せてあげるよ。じゃ秀吉。連れてきてくれないか」
半兵衛が言い終わると同時に、大男……覇王、豊臣秀吉が現れた。手には丈夫そうな縄が握らている。そしてその先には………

「まっ……政宗様!?」

縄の先に現れたモノを見て、小十郎が大声を上げ、伊達軍の兵士たちは刀を取り落して目を見開いた。そう、その先にあったモノ、それは……

 

全裸で体中に縄を巻きつけられ、その間から雄々しいペニスをそそり立たせ、涎をこぼしながらエヘエヘと笑っている―――

 

彼らのリーダー、伊達政宗の変わり果てた姿だった。

 

「きっ、貴様ァ!!政宗様に何をした!?」
「別にぃ?生意気だったから、素直にしてあげただけだよ。ねー、政宗くん?」

政宗は焦点のあわない目でエヘラエヘラと笑い続けている。その体には、顔から足先に至るまで、全身にわたって「阿呆」「魔羅狂い」「豚野郎」さらにはウンコマークなど、卑猥な落書きが所せましと墨で描きこまれている。

「そんな……筆頭……」

兵たちが驚愕と動揺を隠せないでいると、半兵衛が肉奴隷と成り果てた政宗に高らかと命じた。

「よーし、政宗君。手始めに部下のみんなに、キミの特技を見せてあげよう」
そう言うと半兵衛は政宗の縄を緩め、自由が利くようにする。

すると政宗は自らちんぐり返しのポーズになり、部下たちに尻の穴を晒したかと思うと、マヌケにも口をタコのように尖らせ、上体を必死で折り曲げていく。
そう、この愚かな敗北者は、自分で自分のペニスをくわえようとしているのだ。顔を真っ赤にさせて体を曲げる政宗だが、あと少しという所で届かず、尖った口から涎がボタボタとこぼれ落ちるばかり。そこで秀吉が、後ろから強く政宗の体を押し付けてやった。

「むぐぅう~ んんッ ふぐうぅおぉお~」

無理矢理体を折りたたまれて苦悶の声を上げながらも、政宗は自分のペニスをおいしそうにくわえ、ひょっとこ顔で吸い上げていく。

「筆頭!!おやめ下さい!!!」

小十郎の叫びも空しく、ついに政宗は自らの口中に大量の精液を放ち、ゴクゴクと飲み下し始めた。飲みきれない精液が口や鼻の穴から溢れ出る。その姿は、滑稽としかいいようがなかった。

尊敬していた筆頭のあまりに無様な姿に、伊達軍兵の大半はもはや地べたに座り込んでしまっていた。そんな彼らを楽しそうに見下ろし、半兵衛が新たな命令を下す。

「さーて。じゃあ次はダンスでも踊ってくれよ」

精液まみれの政宗は半ば放心状態で、立ち上がることもできない。すると、半兵衛の鞭が容赦なく降り注ぐ。

「ヒィイィー!!!!」
「さっさとやりなよ、この豚が!」

ピシピシと鞭でしばかれ、政宗は勢いよく飛び起きると、手を頭の後ろで組んで、腰を突き出し前後左右に激しく振り始めた。

「ヒィ~!!ィヒッィー!Let`s danceゥ~!!あひぃいいー!」

白目を剥いて舌を突き出しながら、精液に汚れた汚い巨根を中心に腰をシェイクする政宗。そのたびにチンポがペシンプルンと自分の腹やふとももに叩きつけられ、精液が飛ぶ。汗と精液、それに涙や鼻水などで全身に描かれた落書きの墨が流れはじめ、全身から黒い液体を垂れ流す醜い塊となりながら、ただひたすら、滅茶苦茶に踊りくるう政宗。そこに独眼竜、奥州筆頭などと呼ばれた精悍な青年の面影はない。

ただの汚物だった。

「あああ!なんて汚らわしいんだキミは!!」

自分でやらせておいて見るに堪えられなくなった半兵衛が、政宗を勢いよく鞭で打ちつけ、醜いダンスを中断させる。

「んがぁあぁぁぁあ!!!」

その一発がよほど痛かったのか、政宗が耳障りな悲鳴をあげた時、

チョロ…ジョロロロロロロロロロ……

慣性でいまだブルンブルンと回転していた政宗のペニスから、黄色い小便が噴き出した。

「ひぃい」「うわぁあぁああ!!」

焦ったのは下にいた伊達軍の兵士たちである。小便の雨が上空から降り注いでくるのだ。

「まさ…むね…さま……」

呆然としていた小十郎は、政宗の小便をまともに浴び、全身ぐっしょりと濡れてしまう。

「アハハハハ、ほんっと、きったないよねぇ。キミたちのボス」
「もう、いいだろう半兵衛。………いい加減臭うぞ」
「おっと、そうだね。僕もそろそろ腹が立ってきてたんだ。じゃ、政宗君」

長い放尿を終え、政宗はまたしても放心していた。半兵衛はチッと舌打ちすると、後ろから政宗の鼻に指をかけ、顔をむりやり上げさせる。

「ひぎぃっ!?」

鼻をひきちぎらんばかりの力に、政宗は目を覚ます。すると、半兵衛が最後の命令を下す。
「ほら、仕上げだ。キミの部下のみんなに負けを報告して降伏させなよ。敗北宣言だ。さっき教えた通りにね」
「ひゃ…ひゃい。わかりまひたぁ」

政宗はフラフラと前へ出ると、大きく蟹股に足を開き、腋毛がよく見えるよう両手を顔の横に掲げて、2つのピースを作った。顔はもちろん、半ば白目で舌を出し、半兵衛に広げられた鼻の穴から精液とも鼻水ともつかない液体をぶら下げた、間抜けなアヘ顔である。

「て、てめぇら、ごめんなひゃい。オレ、秀吉様に負けひゃいまひた~。ブヒッ。い、今は、豊臣軍の、dogでpigで、にくべんきでひゅう。て、てめぇらも、さっさと降伏ひて、い、いっしょに、肉便器やろうぜぇっ!!!!」

その言葉で、全てが決した。団結がなによりの力の伊達軍は、もろくも崩壊した。戦う気力のない兵士たちは次々と殺され、あるいは捕まって肉便器になった。小便まみれで立ったまま気を失ってしまった小十郎も、うわごとのように政宗の名を呟きながら、あっさりと捕縛されていった。

念のため、ということで、政宗は天主の欄干から、全裸のまま縄で吊り下げられた。残党が大筒を用いるのを防ぐためだ。

奥州筆頭と呼ばれた勇ましい青年は今、悪臭を放ちながら敵の本拠に見せしめのように掲げられ、馬鹿面を晒しながらひたすら糞便を垂れ流し続けている。

こうして、一人の武将と、一つの勢力が、歴史から消えた。

(完)