放課後の茶来くん

「自主トレは疲れるなー。すっかり遅くなっちゃたよ」

弱小野球部のキャプテン(のようなもの)も楽じゃない。後輩と矢部くんの面倒みてから自分の練習にかかったものだから、すっかり日が暮れてしまった。明日も朝練だから早く帰ろう、と繁華街を歩いていると……

(ん?あれは茶来くん?あんなところで何してんだ?)

日焼けした肌にピンクがかった派手な髪…間違いない。最近野球部に入ってくれた茶来元気(ちゃらい げんき)だ。まぁ一言で言えばチャラ男だけど、意外といい奴で、打撃もなかなかのものだ。でも最近練習を途中で抜けて急いで帰ったりするし、何か怪しい。先日なんか突然倒れて、保健室まで連れて行ったことがある。なんでも金欠でモヤシしか食べてなかったのが原因だとか…。明るく振舞ってるけど、かなりの苦労人なのかもしれない。

(あやしい店に入ってったぞ。ホストカフェ「バットボーイズ」!?)

おおかたバイトでもしてるのだろう。にしてもなんだろうこの店。ちょっと気になるな。

「ちぃーす!監督!」
「ん?見かけない顔だな」
「ぅす!チーム テクニカル・バッターから移籍した源紀っす!きょうはどの練習メニューにしますか?」

こっそり店に入り込んでみると、ユニフォーム姿の茶来が客にオーダーを取りに行ってるところだった。どうやら野球少年やコスプレ少年好きなマニアのための新手のホストカフェらしい。…でも、あの客男だぞ?暗い上帽子を被ってるせいで顔は見えないけど、青っぽい服を着て立派な口髭を生やしている。

「そうだな。では…沈黙のミルクコーヒーでもいただこうか」
「あざぁーっす!5番監督からチンコーヒーいただきましたぁー!

茶来くんこんなところでバイトを……… それにしてもチンコーヒーって、いや、まさかな………
と考えていると、茶来が盆の上にグラスに入ったアイスコーヒーを載せて厨房から出てきた。

「おまたせっすー」
「うむ。では、始めてくれたまえ。じっくり見ててやる。私の観察眼は伊達ではないぞ」
「ちょ!ドキドキが半端ないんだけど!」

なんだ?茶来のやつ、ユニフォームのズボンに手を…まさか……

「じゃ、じゃあ、ミルク入りまーっす」

………恐れていたことが。茶来はパンツごとズボンをずり下ろしてペニスを取り出すと、客の目の前でそれを扱き出してしまった。

「なんだ、色気のない奴だな。だがいい筋肉のつき方をしている。どうやら外見だけでなく、本当に野球をやっているようだな」
「スゲっ!監督、そんなことわかっちまうんスか?マジパネェ!」
「おい、確かこのメニューでは、出すまで口を利けないのではなかったか」
「あっ、スンマセン!………んっ、んんっ…」

男に指摘されると、茶来は目を閉じて、堅く結んだ口から喘ぎをもらしながら、さらに激しくシコシコとペニスを扱きだした。男は笑みを浮かべるでもなく、鋭い目つきでじっとペニスを観察している。

「それにしても臭うな、キミのチンポは。汗でネトネトしているのは練習あがりだからだとしても、なんだそのチンカスの溜まり具合は。耐性のない者が見たら思わず戻してしまうレベルだぞ。蒸れているどころか、ほとんど発酵しているではないか」

「………うぅ、んふぅううう~、んんんん~」

茶来は顔を真っ赤にしながら、片手を口に当てて必死に喘ぎを殺している。

「フン、臭うのは汚いチンポだけではなさそうだ。上も脱いでみたまえ」

男に言われると、茶来は一旦手淫をやめて上着を脱いだ。その間も剥けたばかりの仮性包茎ペニスは、ビクビクと脈をうちながら先走りの糸を引いている。男の言う通り、離れていても、はっきりわかるほどカスが溜まっている。男とは逆に茶来には正面からライトが当たっているため、全身が汗でキラキラと輝いている。

「ぐおっ。この私ですら軽くめまいを覚えるほどのこの臭い……。キミ、数週間は風呂に入ってないだろう。そんな体で飲食店に出てきていいと思ってるのか」

茶来は涙目になって、ペコペコと頭を下げながらペニスをシコシコ扱いている。そういや確かに最近のあいつは臭かったな。「練習中はみんな臭いからいいでやんすが、授業中はクラスメートにとっちゃ毒ガス発生装置でやんすね」、なんてどっかのメガネが笑ってたっけ。

「しかし、腋毛もピンクとは……まさか地毛とは思えんが。おしゃれのつもりならやめておけ。汗で絡まって気持ち悪いのが、さらにグロテスクになっている。いつもなら脇に顔を埋めて臭いもチェックしてやるのだがな。いくら私でも、キミのその脇でそんなことをしたら、下手すれば死んでしまう」
「んんんー!んんんー!おふぅんんん~!」

わざと片手を上げて脇を晒しながらペニスを扱いていた茶来だったが、もう限界らしい。荒く鼻息を吐き出しながら、滅茶苦茶に腰を振っている。

「待ちたまえ!客より先にイクなど許さんぞ!だが私が臭いフェチでよかったな!フンっ!」

男は勢いよく立ち上がったかと思うと、いつの間にむき出していたのか、股間から精液を噴き上げた。それが茶来の褐色の顔に降りかかり、ライトに照らされて鈍く光っている。

「ふぅ、はぁ、………しゃべっていいぞ。………空しくなってくる」

茶来は抑えていた手をはなし、ぷはぁっと息を吐いたかと思うと、顔についた精液をすくってまじまじと眺め始めた。

「ちょ!マジかよ!こっちに飛ばすとかマジありえないんだけど!」

ニヤニヤと男を見下ろしながら、嘲笑うように茶来が言う。だが右手はペニスを扱いたままだ。

「やってくれんじゃーん?オレもやっちゃうよー?ザーメンひっかけちゃうよー?」
「くっ、なるほど、たまにはこういう嗜好も……。だが残念ながら私は既に賢者タイムなのだ。キミもさっさとミルクを出したまえ。そうだな、どうせなら中でかき回しながらイけ」
「ちょ!おっさんマジ変態!じゃ、じゃあ、チンポ入りまーっすっ!」

茶来は広いテーブルの上にのぼってグラスの上に四つん這いになり、コーヒーの中にペニスを突っ込んだ。

「うはっ!オニ冷たいんですけどっ!!」

茶来が突き上げた腰をぐるぐると回し、肉棒でコーヒーをかき回す。カランカランと氷が音を立てているが、どうやらその氷が刺激になっているらしい。

「ひいぃっ!チンポつめたっ!氷に挟まれてきもひぃいい!」
「ええい、キミが気持ちよかろうが私の知ったことではない!早くイカんかこの汚ギャル男が!」

パシンっ パシンっ

「ひげぇえっっ!!やめへっ!お尻たたかないでっ!こぼれっ!コーヒーこぼれひゃうよおおぉっ!?」

男に激しく張り手をくらい、茶来の尻には赤い手形がくっきりと浮かんでいる。

「こぼしたら承知せんぞこの淫乱小僧が!高校球児の野球人生など、私の機嫌ひとつで簡単に終わらせることもできるのだからな!」

パシィンッ

「ひぎゃあああああっ!!?」

ブウッ

「ぐあああっ!!目が!目があぁっ!?」

ひときわ高い音を立てて張り手が振り下ろされると同時に、茶来の尻からガスが吹き出し、男の顔に直撃したらしい。男は床に転げ落ちて悶絶している。

「ああっ!しゅ、しゅみまへん監督ぅ!わざとじゃ、わざとじゃないんですぅ!」

茶来はどうしていいかわからないのだろう、心配そうに男を見つめながら、腰をふってコーヒーをかき回し続けている。騒ぎを聞きつけて他の店員が駆け寄って来るが、男は手で彼らを制止してゆっくりと立ち上がった。

「構わんよ。この汚ギャルが屁をこいただけだ」

店員が引き返すと、男はテーブルの上のスプーンを掴み、丸い方を茶来の尻に突き刺した。

「おげゃああぁああああああぁぁっ~~~~!?」

すると茶来は白目を剥いて舌を突出し、獣のような雄たけびをあげる。それと同時に尻の回転が弱まり、コーヒーが白く濁りだす。

「あへ、あへ、あへえぇぇぇぇ~~~お゛ほぉぉぉぉぉ~~~~~」

茶来は尻を突き出し、ペニスをグラスに刺した状態のまま、テーブルに突っ伏し息も絶え絶えに喘ぎ狂っている。ちょうどこちらを向いたその顔は酷いものだ。テーブルに潰れて片頬がぐにゃりと歪み、開ききった口からは舌と大量の涎が出てきている。目は白目をむいて涙を流し、眉はだらしなく垂れ下がっている。伸びきった鼻の下には、両の穴から出た鼻水が川のようにくっきりと浮かび上がっている。

「大変失礼いたしました。お客様。私どもも雇ったばかりで、ここまで小汚い子だとは知らず……」

いつの間にか店長らしい男が出てきて、茶来のアヘ顔を観察していた男に頭を下げた。

「なに、構わんと言ったろう。世の中にはこういうのが好きな者もいるだろうしな。逆に一人くらいいた方が、店も盛り上がるかもしれん」
「おお、あなたがそうおっしゃるのなら……ホラ、源紀!ちゃんとお礼を言いなさい」

店長が茶来の髪を掴んで引っ張り上げる。茶来はよろよろとテーブルの上で正座すると、男に向かって土下座した。

「あひぃ、んへぇ、おほぉっ ………か、監督ぅ!きたないオナラふっかけてしゅみまへんれしたぁ!ていうか、体中臭くてごめんなひゃいぃぃ!!!

尻に刺さったままのスプーンがピクピクと震える。

「いいから、顔を上げなさい。ん……?………シロップまで頼んだ覚えはないのだが……」

うつむいた茶来の鼻から鼻水が垂れ下がり、ちょうど真下にあったコーヒーへとつながっている。店長が怒声を上げて茶来をテーブルから引きずりおろすと、男はグラスを掲げてため息をついた。

「大量のチーズ入りだな……他の子のなら迷いはしないが……大丈夫だろうか」
「お客様、危険です!すぐに代わりの子に作らせますので…」

コーヒーは遠目にもわかるほどおぞましい色に変わっている。おまけに大量にチンカスが浮かんでいて見ているだけで吐きそうだ。きっと臭いも酷いのだろう。だが男は、そんな汚水を、目をつぶってゴクゴクと飲み干してしまった

「おっ、おじさ……監督っ!」

茶来が潤んだ瞳で男を見上げると、男は相変わらずの無表情で

「濃厚だな。私には少々キツイが、お前の汚さが誰かの助けに来る日も来よう。がんばれよ、少年」
「お、おじさあぁぁん!」

茶来くんがときめいた

茶来は男の腕に抱かれて号泣している。ほほえましい光景かもしれないけど……
理解できないや。

気持ち悪くなってきたしもう帰ろうか。と、踵を返したとき、

「ねぇ監督!お礼に、俺のパラパラ見てって欲しいんだけど!普段は別料金もらうんだけどね、サービスしちゃう!」

店長に許可をもらうと、茶来はステージに上がって自慢のパラパラを踊りだした。尻にはいつの間にかスプーンに代わり、電動バイブが刺さっている。音楽に合わせて優雅に踊る茶来だが、手足を動かすたびにペニスが刎ねまわって太ももを打っている。バイブの衝撃のせいなのか、顔はまたしても無様なアヘ顔になってしまっている。

「アっヘえええええ!見て!元気のっ!変態ダンス見てくらひゃいいっ~!元気はっ、臭くて汚くてエロい、変態高校球児なのぉっほおおおおおっ!!んへぇっおへぇっ!必ず甲子園イクかりゃ、応援してくらひゃいっ!あと、犯してくれる人も募集中でぇええすっんおへええええええぇええええええええぇぇ!!」

弾道が上がった

くっ、不覚。あんな汚いのに。でも良かった。ちゃんと野球への情熱は残ってるみたいだ。たとえ変態でも、茶来くんはやっぱり仲間だもんね。
茶来の変態ダンスを間近で見たくなって、例の客の隣に腰かけた。

「やれやれ、私へのお礼といいながら、すっかり自分のアピールになってるな」

男はタバコを吹かしながら、茶来の痴態を撮影している。随分と高そうなカメラだ。
あれ?この人の顔、どっかで見たような……… いや、そんなことより茶来だ。ステージで踊り狂う彼に視線を戻した時には、踊りながら片手でペニスを扱いていた。顔は普段のかわいい顔から想像もつかないほど快楽に歪みきっている。昔、無表情でパラパラ踊っている人見て愕然としたけど、しかしアヘ顔でパラパラってのも酷いものだね。

「んへっ、おっほおぉぉぉ~!?ちょ!オレマジ変態!!こんな姿、チームメイトに見られたらマジ死ねるんですけどおぉホォォォォ~!!! って…」

あ、近づきすぎてた。

「ちょ!!なんでいるんですかあああああああああっっぁんお゛へえぇぇぇぇぇっ~~~!!!??????ひぃいいい!オワタ!俺の人生おわりまひたあぁぁぁぁ あへえええええっ~~!!!!!」

気でも狂ったか、茶来は叫びながらも、曲が終わると同時にばっちりとダブルピースでポーズを決め、精液を噴き上げたかと思うと大の字に倒れてしまった。

アヘ顔でスポットライトを浴びたままピクピクと震える茶来。それを見下ろして呆然としていると、髭の男が独り言のような小さな声で、ぽつりと言った。

「チームメイトなら、大切にしてやれよ。あいつは、あれでなかなか素質がある。まぁ、変な方の素質もあるようだが………」

 

 

 

翌日

俺と茶来は、募金箱を持って駅前で声を張り上げていた。
あの後茶来に問い詰めたところ、自分を育ててくれた祖母の手術費が欲しかった、とのこと。

「約束したんだ。絶対甲子園へ行くから観に来てくれって。それまで元気でいてくれって」

一途な茶来に心を打たれた俺は、茶来といっしょに朝から募金を呼び掛けているのだが……まぁ、そうそう集まるわけがないよね。

「もういいよ。ありがとな、オレのために」

昨日のアヘ顔が思い出せなくなるくらい、かわいらしく、それでいて儚げな笑顔だった。胸が痛んだ。でも、どうしようもない。とりあえず一旦出直そうと帰り支度にかかったとき……

「あれ?茶来くんの足元にあるその紙袋なに?」
「あれ、マジで。なんだろ」

不思議そうに袋をガサガサあさってみた茶来が、素っ頓狂な声を上げた。

「さ、さつたば!?すごい金額だ!」
「手紙が入ってるぞ。『甲子園を目指す野球少年よ!ときめけ! はばたけ! どんといけ!』」

茶来は袋を握りしめたまま固まってしまっている。

「すごいじゃん!これでおばあちゃん手術できるね!」
「ああ………でも、いったい誰が………?」

あたりを見渡したが、誰もいない。ただ、遠くに青っぽい影が見えたような気がした。

「フッ……さまよえる野球少年を、また1人救ってしまったな」

 

(完)