『帝国の落日・裸の王様(前編)』の続きです。
調教4日目
いつものように2人が部屋に入ってくると、少年王はハァハァと息をつきながら、トロンとした顔を向けた。
「おいおい、昨日まではかっこよく睨み付けてきたくせに、何だその顔は」
ハーヴェルは何かを言いかけ、もごもごと口をつぐむ。
「言いたいことはわかっている。早く言ってしまえ」
(僕は………カストル帝国の皇帝なんだ。みんなを………守らなきゃ………)
必死で理性を保とうとするハーヴェルだったが、前日の快感がどうしても忘れられない。
「このブタ皇帝、あんなアヘ顔晒しといて、今さら何悩んでるのかなー?」
(ブタ………。そうだ、僕は浅ましいブタ皇帝……… ?ち、違う!僕は、僕は………)
うつむいたまま黙り込んでしまったハーヴェルの様子を見て、コールが背中を向けてドアへと引き返していく。
「やれやれ。てっきりそろそろまた射精したくてたまらくなってるのかと見に来てみたが、どうやら余計な世話だったようだ。今日はもう帰るか」
「!!待って!」
叫んでしまってからハッとして、ハーヴェルは頬を染める。コールはピタリと立ち止まって顔を向け、
「何だ。言いたいことがあるなら聞いてやる」
(シェミル、ゼラス、みんな………ゴメン!!!)
少年王は、濁ってしまった青い目をコールに向けて、小さく呟いた。
「射精、させて………」
「あはははは。この子、自分が何いってるかわかってんのかなー?」
「頼み方がなっていないな。礼儀知らずが。ブタなら身分をわきまえろ」
「あはは。そうだねー。じゃ、こーいうのはー?『僕はマヌケなオス豚奴隷です。汚いチンポから臭いザーメン出させてください』」
キンスターが楽しそうに提案すると、コールは黙って頷き、皇帝に言葉を促す。
「ぼ、ぼく…は………」
(何を言ってるんだ僕は!)
「もういい。戻るぞキンスター」
(もうっ………ダメだっ!!!)
コールを引き留めたい一心で、少年皇帝はついに、最後の自尊心を捨て去った。
「僕はっ!!間抜けなオス豚奴隷ですッ!汚いチンポから臭いザーメン出させてください!!」
「あはははははは!!馬鹿だねーこいつ!」
キンスターが指を指して嘲る。ハーヴェルの中で、何かが壊れた。
「もう一度聞こう。チンポと国民、どっちが大切なんだ?」
「チンポッ!チンポです!!オス豚ハーヴェルは、ドピュドピュ精液をまき散らすことしか考えられません!お願いですから、くっさいザーメン射精させてくらひゃいぃぃ!!」
即時に返ってきた斜め上を行く言葉に、2人は一瞬言葉を失ってしまった。
「………そこまで言えなんて言ってないぞ。ダメだこいつ」
「あはは、それじゃーさー。国民の皆さんにお願いしなよー。精一杯無様なポーズと言葉を示して、キミがどんな人間か知ってもらわないとー」
「はいっ!!何でもやります!!みんな、僕のみじめな姿見てっ!!!」
「3日目前とは別人だな……。フン、言っておくが、チンコ触って射精しようとしたら、すぐにちょん切ってやるからな」
呆れながらコールがハーヴェルの拘束を完全に解き、3人は連れだってハーヴェルの部屋へと向かった。
「ブーブー!!ブヒブヒィ!!僕は皇帝なんかじゃありません!薄汚いオス豚でひゅ!ブヒッ♪ だっ、だから!この醜いオチンポを、誰か扱いてくだひゃい!お願いしまひゅうぅ!!ブゥヒィイィィィッ!!!」
自室のバルコニーに全裸で現れたハーヴェルは、右手の人差し指で自らの鼻をブタのように押し上げ、左手は半円を描いて頭の上に突き立て、ペニスを強調するようにガニマタになると、城下の国民に向かって声高に訴えかけた。
帝都に暮らす何万という国民が、都市の中央から全裸でおねだりをする皇帝を、驚愕と失望、嘲りをこめて見上げている。
そんな様子に、コールは5年前の惨劇を思い出した。自分の兄が、大勢の部下の前で痴態を晒した、あの瞬間を。
(俺も、Rと同じだ)
無様なハーヴェルを見ていると、自分自身に対する怒りが込み上げてきた。だが、すぐに思い直した。だからこそ、これでいいのだと。
(そうだ、腐った帝国と、そしてRとゼラスには、奴らがやった以上のことをしてやらねばならないのだ。これは、天罰なのだ)
隣ではキンスターが面白そうに哀れな少年を眺めながら、呑気にポークカレーを食べている。
ハーヴェルはやがてバルコニーの欄干に尻を押し付けるような態勢を取り、両手で大きく穴を広げて叫んだ。
「ケツマンコっ!臭くて汚い皇帝マンコにもっ!!チンポ様をお恵みくだひゃいぃぃ!!このウンコ以下のチンコ狂いに、お慈悲をぉっ~!!!」
欲望に満ちた瞳を寄り目にして、ハーヴェルは股の間からペニスごしに国民に懇願した。逆さまになった顔を涎が遡り、生糸のようと評された薄い青色の美しい髪に染み込んでいく。
ハーヴェルの無様な痴態ショーは、日が暮れるまで続いた。
その夜。
港のそばにある時計台。帝国一の高さを誇る重厚な建築物で、帝都のランドマークとなっている人気スポットだ。
その時計台の大きな振り子に、大きな部品が取り付けられた。
「あひぃぃぃぃおげぇぇぇ~~!!チンボオオ゛ォォォ~~!!」
真夜中の静寂の中で、この振り子から上がる奇声だけが、帝都中に響き渡る。
「ンッヒィィ~!!イギたひィィィ~~~!!イガゼデえぇぇぇぇ!!!」
ソレは、休むことなく卑猥な雄たけびを上げ、一時間おきにそのみじめな体を左右に激しく振られ、汚い体液を周囲一帯にまき散らす。
一日中轟く奇声は近所迷惑極まりなく、時計の鐘さえかき消される。おまけにベトベトの涎や鼻水をまき散らすソレは、全くもって迷惑な飾りであった。
「フンゴォォォ~~~!!!もっもう!もうゆるひてっ!!おねがいれひゅ!!!なんれも!何れもしまひゅ!国でもなんでもあげまひゅ!らかりゃ、チンポミルクピューさせてくだひゃいいいいぃぃぃ!!」
そう、ソレはかつて、一国の皇帝だった。それも、明るく聡明で心優しく、気品に満ちた高潔な少年王だった。だがソレにとっては最早、そんなことはどうでもよかった。ただ、大量に射精し、大量に中出しされることだけが望みであった。
「あんなのが皇帝だったなんて!あんなのがトップだったら、そりゃ国がうまくまとまるわけないわよ!!」
「今までの内戦は、全部あの変態のせいだったのか!!」
「ママー、あれなにー?」
「こら!見ちゃダメですったら!目が腐りますよ!」
「チンコオォォ~!!!チンコ!ティンポ!チンポ!チンポコ!ペニス!おチンチんんん~!!!!」
かつてハーヴェルと呼ばれる名君だったソレは、生きるのに十分な栄養を毎日投与され、死ぬこともなく、ひたすら白目を剥いて射精を求め続ける。
「オレはお前の国に祖国を滅ぼされ、理想を潰された。お前は永遠にそこにぶら下がって、チンポをおっ勃たたせてろ」
コールの怒りもソレには届かない。快楽に溺れて国を捨てた「チンコ王」ハーヴェル・カストルは、史上類を見ない、世界一愚鈍で淫乱な最低の王として、永遠に歴史の中に名を残すこととなった。
「んほおおおぉぉぉ!!!オチンポ最高~!!!!」
時計台の振り子に傍迷惑な部品が取り付けられてから数日後。コールとキンスターはそのすぐ近くの港の防波堤に腰を下ろしていた。
「たいちょー。これからどうするのー?Rはこっちに寝返ったんでしょー?復讐はあきらめるのー?」
「フン、寝返ったところで許しはしない。みてな。今にあいつも、アレ以下の汚物に変えてやるよ」
コールが上空から奇声と汚水をまき散らす物体を指さしていうと、キンスターはカラカラと笑いながら答えた。
「アレ以下ってのはなかなかレベル高いねー。ふふ、俺もはりきっちゃうよ。今回はたいちょーにいいとこ取られちゃったしねー」
総攻撃が開始されたあの日。Rからレジスタンスのリーダー・ギャレッドに密書が届いた。わざと帝都の警備を0にするので、その隙をついて帝都を占拠せよ。そののち自分はゼラスを捕縛してレジスタンスに合流。共和制樹立に協力するので、首脳部に入れてくれという。確かに帝都占領もハーヴェル潰しも成功した。皇族はもう残ってないはずだ。このままいけば、ギャレッドを頂点にした共和制樹立は間違いないだろう。
しかし、コールにはどうしても納得がいかなかった。Rは自分の存在をしっている。なら、裏切ったところで、Rに居場所がないこともわかっているはずだ。
嫌な予感がする。
改めてそう思っていたところに、戦艦の影が見えた。今日、ギャレッドとRが大陸に上陸する手はずになっている。立ち上がってその影を見据えたコールは、思わず眉をひそめた。
巨大な戦艦のマストの上に、人影が見える。だが、様子がただ事ではない。狭い空間で、一秒たりとも留まらずに動き回っている。いや、踊っているのか。やがて、船が間近に迫ったところで、ようやくその人影の正体に気づいた。
「ヒィィ~!許してくりゃひゃいいいい!んひっ!レジスタンスなんてもうやりましぇん!だかりゃ、みんなを殺さないでくだひゃいいっ!」
「無駄口叩いてないで踊りを続けなよ」
「ひゃいっ!ランっランっ♪チンコ音頭楽しいなっ♪ひぃっ」
「………リーダー………」
それは、体中に卑猥な落書きを施し、全裸で踊るギャレッドだった。
「やぁコールくん、出迎えご苦労。あれ?あれってひょっとしてハーヴィー?アッハハハハハハハハハ!!!すごいや、あのハーヴィーがあんな汚物に?ハハハハハ!哀れなハーヴィー!しばらく見ない間に、なんて姿だよ!すごいねぇキミ!僕でもあんな酷いことできないよ!」
踊り跳ねるギャレッドに鞭を振りながら、マストの上のRが気持ちよさそうに話しかけてきた。変わり果てたギャレッドの姿に、さすがのキンスターも驚きを隠せなかったようだが、しかし、彼の目には既に嗜虐の炎が浮かんでいる。コールの方は、怒りで何も考えられなくなっていた。
「Rゥ!!!!!貴様ァァァァ!!!!」
「あー、そうだったね。ちゃんとした自己紹介がまだだったよ」
コールの怒りなど知らぬ風で、Rはマストの上から朗々と名乗りを上げた。
「僕の名はルードヴィッヒ・グライナル・カストル。カストル帝国の、正当な継承者だよ」
呆然とするコールに、激しい潮風が吹きつけた。雲が沸き起こり、Rの顔に影が差す。
「君たちのおかげでね。フフフ、ハハハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
ぽつぽつと雨が降り出したかと思うと、間をおかずに雷鳴まで轟き始める。
帝国に、嵐が迫っていた。
続く