ブチ込め!

「やっべ、すっかり遅くなっちまったな」

午後10時。ふと時計を見上げて、半座龍之介は額ににじむ汗をぬぐった。
数日後に大会を控えている。皆が帰った後、顧問の菅野に無理を言って武道場の鍵を借り、一人で形の稽古を続けていた。

「いい加減帰らねぇと。あのうるせー教頭に見つかったら、どんな言いがかりつけられるかわかったもんじゃねぇ」

どうせ明日も早朝に出てきて練習にかかるのだ。今夜は道着のまま帰って、明日は道着のまま登校することにした。何より、もう少しこの道着を着ていたかった。

充実していた。佐田中の血龍(ブラッディドラゴン)と畏れられ、不良界のトップに君臨していた頃には決して味わえなかった清々しさ。やっと見つけた一輪の花。
空手に出会ったことで、人生が変わった。仲間もできた。憧れの人も、互いに認め合えるライバルも。真剣に物事に打ち込む幸せも、空手を通して知った。

(俺は、変わったんだ)

道着の暖かさを感じて無意識に顔をほころばせながら、半座は1人、夜道を歩いていた。が、不意に嫌な空気が漂ってきて、足を止める。前方を見据えた表情から、笑顔は消えていた。

「俺になんか用か?」

半座はぶっきらぼうに問いかけた。いつのまにか、十数人の男達に取り囲まれている。

「フン、よくもそんな白々しい口が聞けたもんだ」
「きっちりと借りは返させてもらうぜ」

学ランを着こんだ男達は、一様に殺気立った目で半座を睨んでいた。バットや木刀を手にした者もいる。

「悪いな。もうお前らとやり合うつもりはねぇんだ。どいてくれ」
「なんだとテメェ!お前になくても俺らにゃあるんだよ!」
「よせ、関根」

今にも殴りかかろうとするタラコ唇の男を、アフロの男が制止する。

「ふざけた格好をしているな、半座」
「そんな頭の奴に言われたかねぇよ」
「なにィ?」
「噂はホントだったようだなぁ、横川。半座の奴が足洗って、空手にのめり込んでるって話」

リーゼントの男が割って入り、吐き捨てるように言って半座の胸倉をつかむ。

「ふざけてんじゃねぇよ!貴様には舎弟が何十人って世話になってんだ!何いい子ぶって一人だけ青春してやがんだ!」

半座は表情ひとつ変えず、じっと男の目を見つめてぼそりと呟いた。

「悲しいな…」
「んだと!?」
「俺はようやく見つけた。一輪の花ってやつをさ。それで救われたんだ。でも、お前らは、ずっとそうやってもがいてんだな…」

憐れむような半座の眼差しに、男の怒りが爆発した。怒声を放つや、半座の顔を殴りつけ、倒れた半座の体を蹴りたくる。

「ぐあっ…!へっ、痛ぇ。ひたすら痛ぇ。なにも伝わってこねぇよ…。でも、それで気がすむなら、好きなだけ殴れよ。俺はもう、血を見るための拳はふるわねぇからよ…」
「ふん、恰好つけやがって。どの道、お前がやり返さないことはわかってんだよ!」

ゲジゲジ眉毛のいかつい男が、勝ち誇ったように叫ぶ。

「暴力事件でも起こしたら、空手道部は試合に出られないんだろぉ?そうだろうなぁ!お前みたいな化け物じみた奴がか弱い俺たちを一方的にやり倒したんじゃあ、そりゃあ喧嘩どころか立派な暴力だよなぁ!」

仲間の努力を楯に取るつもりか。半座の中で血龍が再び騒ぎ出した気がした。だが、彼はそれを静かに抑え込んだ。少し前にも、自分のせいで大会出場停止になりかけたばかりだ。それでも部員たちは、こんなクズの自分を再び笑顔で受け入れてくれた。もう二度と、迷惑をかけるわけにはいかない。半座は腹をくくった。

「好きにしろ…。テメェが招いたことだ。罰は受けるさ」
「まったく、龍も堕ちたもんだよな」
「それじゃ、遠慮なくやり返させてもらうぜ」
「ありがたく思うんだな。今日は20人もいねぇ。お前に恨みを持ってるやつの、五分の一もいないんだからよ」

(そうだよな…。いくら俺が変わっても、過去は変わらないもんな。こいつらにも、悪いことしてたのかもしんねぇ…)

半座は自嘲気味に微笑むと、ゆっくりと目を閉じた…。

 

 

 

1時間後

「オラぁ!しっかりしゃぶれやぁ!」
「むごおおぉぉぉ!?」

半座は一通り殴られ蹴られ、身体の自由が利かなくなった後、道着をはだけさせられ、口にはリーゼントの男の一物を咥えさせられていた。パンツもずり下ろされ、むき出しにされたペニスは別の男にぐりぐりと踏みにじられている。

「んぐぅ!んごおっ!?」

当然男のペニスを咥えるなど生まれて初めてで、半座は既に口中の悪臭とおぞましい感触、なにより息苦しさに目を白黒させ、息も絶え絶えになっている。

「オラァ!俺が受けた痛み、貴様も思い知れぇっ!!」

股を広げられてむき出しになった半座の肛門に、アフロの男がバットの柄を勢いよく突き刺した。

「むぎゃああああああああああああっっ!!!!????」

半座は思わず男のペニスを吐き出し、白目を剥いて絶叫する。それと同時に、半座のペニスから黄色い液体が勢いよく噴き出した。

「うげぇっ!キタネェ!こいつションベン漏らしやがった!」

ペニスを踏みつけていた男が、慌てて足を上げる。半座の小便は股の間から勢いよく広がり、足元にずり下ろされていた道着に染み込んでいく。

「あひゃ、ひぃ、道着が、どうぎがあっ…!!あああああっ!!!」

半座の脳裏に、憧れの女性、そして尊敬する師でもある女性の声が響いた。

(あるいは汗で黄ばみ、血で汚れることもあるかもしれない。しかし)

そう、確か、この道着を渡してくれたときの…

(心だけは真っ白であること、忘れるなよ!)

まさか、まさか小便で汚してしまうなんて…

「う、うわあああああああああっっっ!!!」

ついに半座は泣き出してしまった。尻にバットを突っ込まれたまま、駄々っ子のように体をよじってのた打ち回る。

「あーあ、横川さん鬼畜すぎー。半座ちゃん泣いちゃいましたよー」
「うっせぇ、俺だって…ん?いや、気にするこたねぇよ、こりゃ嬉し泣きだ」
「は?」

不良たちが訝しがるのを見て、アフロの男は半座のペニスを笑って指し示した。
なんと、ソレは小便で光りながら、たくましく天を指して勃ち上がっていたのである。

爆笑する男達。半座は半狂乱になりながら、必死になって弁解しようとする。

「ち、違うぅっ!これは、違うんだアッッ!!」
「なにが違うってんだこの変態野郎!」
「ケツにバットぶち込まれたのがそんなによかったのかよ!」
「ひぃぃぃ!!やめろぉ!もうゆるひてぇっ!!」

小便の広がる地面に這いつくばりながら、半座は鼻水まで垂らして懇願し始めた。よもやこれが全不良を震え上がらせた「血龍」だとは、誰が気づけようか。

「ははは!やったぞ!ついに倒したんだ!半座龍之介をっ!!!」

自分たちを散々こけにしてきた相手の無様な姿に、不良たちは満足げに笑顔を交わした。感動のあまり涙ぐんでいる者もいる。
ゲジゲジ眉毛の男が半座の尻からバットを引き抜いてやり、血と腸液で光る柄を、半座の面前に差し出した。

「しゃぶれよ。きれいにしゃぶって、土下座して謝れ。そうしたら許してやる」

半座は朦朧とする意識の中で、ただひたすらにバットをしゃぶっていた。気持ちの悪い味とほのかな便臭が口中に広がる。

(心だけは…心だけは…)

心中ではひたすら、呪文のようにそう繰り返していた。
許可が降りるとバットを離し、地に手をついて頭を下げる。癖になっているのか、丁寧に指先で三角形を作り、背筋を伸ばしている。そのまま、言われた通りの文言を叫ぶ。

「ケツにバット突っ込まれてチンポ勃てる変態のくせに、調子にのってすみませんでしたぁ!二度と逆らわないので、変態チンポに免じてどうかお許しくださいぃぃっ!!」

叫びながら、ペニスをピクピクと震わせていた。

不良たちは腹の底からカラカラと笑うと、満足しきってもう解散しようということになった。しかし、ゲジゲジ眉毛の男が、ぽっかり空いた半座の肛門をみてゴクリと息を呑むのに気付いて振り返った。

「なんだよ安田、もしかしてお前ホモ?」
「んなわきゃねぇだろ!でもよ…」

男は半座の前に屈みこみ、ズボンを下ろしながら続ける。

「穴があったら入れとかなきゃ…って気、しねぇ?」

 

 

30分後

半座の尻は20人弱の男によって、代わる代わる犯されていた。最初は大泣きして嫌がっていた半座だが、その様子に少し変化が見られるようになった。顔は紅潮し、鼻息荒く、アンアンと嬌声をあげている。

(…あれ? 嫌じゃないぞ………?)

半座はもう、自分の気持ちがわからなかった。今自分が何をされて、どうしたいのか…しかし…
(いや、そうだ…!心だけは、心だけは…!)

十数人目となるタラコ唇の男が、突っ込みながら咆哮した。

「おうらぁ!一本!どうだぁ!空手の神髄は、他を容れる心なんだろう!?いっぱい挿れてもらえてよかったなぁ!」

(他を容れる…心?そう、そうだよ。なんだ、こいつら、わかってんじゃん。おれ、間違ってないじゃん…)

半座の表情が緩み、口元がにやけてくる。そして男が中で出すのと同時に、半座のペニスからも白濁がほとばしり、さらに何人かが半座の顔に精をふっかける。

「真っ白だよ、俺。心まで…。はは、ははは、はははははは!」

探し求めていた一輪の花…
それがガレキの中にも咲いていようとは
まったく気づかなんだ…

 

 

 

 

翌日

アフロの男は学校には向かわず、溜まり場の一つである空き倉庫へと急いだ。ガラガラと扉をあけると、倉庫の中央に人だかりが見えた。大勢の男が、一人の少年を取り囲んでいる。悪臭を放つ黄ばんだ道着を身に着けた少年は、何本もの男根をうまそうになめしゃぶっているようだった。

「んぼぼぼぼっ!ジュルルルルル!うっへぇ!チンカスうめぇ!お前ちょっと溜めすぎだって!クンクン、フゴフゴ、はは、くっせぇ!やべ、俺も勃ってきちゃうじゃんかよぉっ♪」

少年は道着をずりさげてペニスを取り出すと、相変わらず男達のものを舐め回しながら、自らのものも激しく扱き出した。

「うひいぃぃぃ!しゃいこおおおっ!チンコしゃぶりながらのオナニー、スゲー気持ちぃ~!なぁなぁ、すごいんだぜ!お前らもやればぁ?おヒィィィィぃ!!!」
「ごめんな、俺ら半座ほど変態じゃないから、その境地には達せそうにないわ」
「龍ちゃーん。ホラ、記念撮影するよ!ピースピース!」
「んぽっんぽっ…うへへ、ぴーすっ!」
「うは、すっげーアホ面!鼻水出てるよ!よく撮れたから皆にもみてもらおっか」
「えー?みんなって誰よ?佐田中のやつ?あ、ばかおま。急に挿れるなってアヘェエェエェェェェッェ~ッ♪」

ほほえましい光景を見つめながら、アフロの男は感慨深げに頷いた。

「…ほう、なかなかどうしてサマになってら♪こりゃ何処に出しても恥ずかしかねーなぁ…」

さて、何処に出してやろうか…

(終)