文
「メリークリスマース!」電灯を消した部屋でクラッカーを鳴らし、ケーキの上の蝋燭の火を吹き消した。卓の隅に置かれたキャンドルの心もとない灯りが、聖夜のムードを演出している。年に一度のクリスマス、俺はパーティーを開いて盛大に楽しんでいた。……1…
わがままな王子様※
むかしむかし、とある国に、わがままな王子様がいました。欲しいものは何でも与えられて育ったために、どんな願いでも望めば叶うと思っていたのです。実際その通りでした。成長するに従って横暴になる王子様に、国民や大臣はもちろん、父親の国王様ですら頭が…
極上の豚肉※
異様な木々が立ち並ぶ樹海の奥地。剣や弓、槍などで武装した数人の男達が、たき火を囲んでたむろしていた。一様に表情は暗い。「やっぱりあの村長の話、ちゃんと聞いとくべきだったなぁ」「今更言っても仕方ないだろう」彼らは皆、ある程度の名の知れた冒険者…
黄金の棺※
※『極上の豚肉』の続編です。 「はん、ここが例の森か」異様な木々が立ち並ぶ薄暗い樹海。多くの冒険者が消息を絶った魔の森に足を踏み入れ、少年は忌々しそうに顔を顰めた。見渡す限りに広がった木々。足元…
マジキチクエストⅠ-1※
古来、大陸に伝わる伝説、十大淫魔。人間の痴態を肴に、人間の体の一部や体液、排泄物などをエネルギーとする10柱の強大な悪魔。人々は長きに渡り、彼らに虐げられ、それでも抗い続けていた。大陸の中心、聖王国の宮廷は、魔王のアジトとなるダンジョンを見…
マジキチクエストⅠー2※
「うくっ……こ……ここは……?」赤茶色の壁と床に囲まれた殺風景な部屋で、少年賢者リアンは目覚めた。ゆっくりと立ち上がり、ローブの裾をポンポンと払う。あたりには、誰もいない……。「ああ、そうだ……。キルファがやられたんだ……」落ち着く暇もなく…
マジキチクエストⅠー3※
「ねえ、キルファ」「ん?なんだよ?」「僕、勇者になれるかな?」暖かい木漏れ日の降り注ぐ街道を、2人の少年が並んで歩いていた。背の低い方の少年が呟いて立ち止まると、大きい方の少年も歩みを止め、じっと彼の顔を見つめた。「大丈夫だよ、今更何言って…
Dr.ゲドー診療所※
昼間でもすっかり肌寒くなり始めた秋の午後。いえ、もう日は傾いていますが。精神科医というのも昨今は随分と忙しくなっちゃいましたが、まぁ私のような怪しい開業医を頼ってくる人は少ないものでして。今日はもう予約の患者さんは皆さん帰られましたし、どう…
Dr.ゲドーVS天才ハッカー(前編)
※『Dr.ゲドー診療所』の続編です。 またお目にかかりましたねぇ。藪医者のゲドー(仮)です。いやはや、長らく暇な生活が続いていたのですが、忙しい時はとことん忙しいようで、まったく、参っちゃいますよ。数か月ぶ…
Dr.ゲドーVS天才ハッカー(後編)
※『Dr.ゲドーVS天才ハッカー(前編)』の続編です。 ……危ないところだった。赤峰健太は、パソコンを抱えて街を歩きながら、ほっと息を吐いた。天才ハッカー、ヘラクレスともあろうものが敵の仕掛けた…
Dr.ゲドーと男根信仰(上)
じめじめと蒸し暑い季節になってきました。年が明けてからというもの、大きな仕事もなく一日中診察室でゴロゴロするだけの生活を送っていたのですが、こう蒸し蒸ししているとゴロゴロするのも難儀でいけません。患者さんの忘れ物のファッション雑誌をパラパラ…
Dr.ゲドーと男根信仰(中)
※『Dr.ゲドーと男根信仰(上)』の続きです。 やれやれ、この二崎(ふたざき)という男。伝説の壊し屋だかなんだか知りませんが、催眠にかかってしまえば大したことはありませんね。懐からジャックナイフまで取り出し…